神戸市立博物館で開催中のターナー展に行ってきましたので、今日はその感想を。
はるばる来たぜ!神戸市立博物館
ターナー展の看板を見上げて
英国が誇る風景画の巨匠ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの10代の習作から晩年の到達点まで130点を集めたという今回の展示。平日のほとんど朝いちばんだったというのに、会場はすでに多くの来館者でにぎわっていました。
ロビーでは、今回の展覧会のメインビジュアルとなっているターナーの作品『チャイルド・ハロルドの巡礼―イタリア』の巨大パネルと、ターナーの絵で翌日の天気予報を表すユニークな展示「ターナー天気」がお出迎え。
記念写真は撮り放題
音声ガイドは辰巳琢郎さんとのことで、かなり心惹かれましたが、自分のペースで見られないのは困るので断念し、さっそく展示室入りです。
音声ガイド貸出中
実はターナーについては、過去に見た作品の黄色と青の色使いがいいなあと思ったという記憶(しかし作品名は憶えていない)と、若くして成功した画家だという知識ぐらいしかない上に、風景画鑑賞のポイントも分からないので、もしかしたら楽しめなかったらどうしようという一抹の不安がありました。
しかし、そんな心配は無用でした。作品を見ていくうちに、ターナーさんが意外とクセのある面白い人ではないかと思えてきたからです。
例えば、『レグルス』。
まずは絵を見て、何とも神々しい光の表現だと感心したのですが、解説を読んでゾッとしました。レグルスとはローマの名将の名前です。数々の戦で勝利を収めましたが、カルタゴとの戦争の際に敵の手に落ち、拷問の末に失明しました。どんな責め苦にあったか、気になる方は「レグルス 拷問」で検索してみてください。
なぜそれを?という不穏な題材を選んでお客を逃したこともあったようですね。パトロンの居間に飾る絵のテーマに座礁した船を描こうとしてボツになったり、王室から依頼されたトラファルガー海戦の戦勝記念の絵に負傷者をわんさか描いて不興を買ったり。王室に関しては、それ以降、依頼が来ることはなかったようです。
若くしてロイヤルアカデミーの会員となり、庇護者を求めて抜かりなく売り込みをすることもあったという人が、こうした重大な局面でうっかりすることは考えにくく、もしかして、ターナーには権威を茶化して怒らせてやろうという側面があったのではないかなあと思う次第です。いわばブリティッシュパンクの祖?
晩年は、ロイヤルアカデミーの冷笑にもかかわらず、実験的な制作を続けていたというエピソードにも、ぐっとくるものがあります。
しかし、そんな感動をかなり減殺してくれたのが、最後のコーナーに展示されていた、ドルセー伯爵のスケッチに基づくターナーの肖像画。「ドルセー伯爵 ターナー」で画像検索してみてくださいorz
いや、イケメンな自画像を頭に描きつつ鑑賞していたので、地味にダメージくらいました。展示の順番を考えた人は、なにかターナーに恨みでもあったのでしょうか。