伊藤忠ファッションシステムの「ifs未来研究所」所長・川島蓉子氏と、6人の経営者とクリエイターの対談をまとめた本。テーマは、日本のデザイン。川島氏は、いつの頃からか日本のデザインが「ダサくなっている」と感じており、「かっこいい」経営者やクリエイターの話を聞いてみようと思ったのが企画の発端であるとのこと。
「かっこいい」経営者とは、TSUTAYAでおなじみカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長、伊藤忠商事の岡藤正広社長。そして「かっこいい」クリエイターは佐藤可士和氏、和田智氏、石井裕氏。
目次を見ると、
「僕がいっさい図面を見ないから、代官山 蔦谷書店ができた」(増田社長)
「ヤン坊マー坊だけじゃ、世界と戦えない」(佐藤氏)
「かっこよくなければ、百貨店は生き残れません」(大西社長)
「ミニバンに乗るの、やめませんか?」(和田氏)
「目の前のお客さんしか見えてないのは二流の商人です」(岡藤社長)
「デザインという古い枠は死んだ!」(石井氏)
などなど、興味をそそられる見出しが並んでいる。
読んでみたら、期待通り面白かった。特に印象に残ったのが佐藤可士和氏と和田智氏。
佐藤氏の対談は、ヤンマーのブランド構築事業についてがメイン。日本では農機具メーカーとして有名で、「ヤン坊マー坊天気予報」のイメージが強いヤンマーだけど、海外では、クルーザーのエンジンメーカーとして有名で、「ラグジュアリー」なイメージがあるんだとか。
つまり地域によってブランドイメージがばらばらなわけで、その統合を図るのが佐藤氏のお仕事。「プレミアムブランドプロジェクト」というらしい。
もともと私は、佐藤可士和という人は、セブンイレブンのコーヒーマシンがスタイリッシュすぎるなどの理由で、なんとなくいけ好かないと思っていて、このプロジェクトのページも正直やっぱりいけ好かない(ごめん)。
しかし、本書の対談の語り口調にはすごく好感を持てた。なんというか、クライアントに絶妙の立ち位置で寄り添い、言葉を尽くして仕事をする人という印象。
ちなみに、超整理好きになったのは、近所の落ちこぼれでいつも鼻をたらしたガキ大将の家に行ったら、そいつの部屋が超きれいだったからだそうで。なんとなくアンチ可士和の人は、ぜひ一度読んでほしい。
続いてもうひと方、アウディのデザインで知られる和田智氏。
残念ながら「短期的に売れるデザイン」を目指したモノが、洪水のようにあふれているのが日本だと思います。やたらに大きくて主張の強いクルマのヘッドランプが典型ですね。ただ、単に目新しさを狙ったものは、古くなるのも早い。あとから見れば誰もが気づくことです。でも、プロである作り手がそんな当たり前のことに気づいてないのです。
ここ、全面的に同意。最近の車って、顔がでかくて人相悪いよなーって嫌気がさしていたこともあり(悪役のメカみたいなんだよな)。氏の掲げる「美しい普通」があふれる日本になってほしいと、私も切実に思う。
しかし、「日本のみなさん、ミニバン乗るの、やめませんか?」には違和感。
理由ははっきりしています。ミニバンばかりの自動車の風景は美しくないし、乗っている人もかっこよく見えないからです。
また、自宅の近所に野球場があり、子供たちがミニバンのお父さんに送迎されている光景を見て、
お父さんが子供たちの運転手に成り下がったように見えたんですね
とも。ミニバンには父親の威厳を感じさせるものがない、その点自分の子供の頃は、欧州では今でも…という意見をお持ちのようなのだが、どこぞの掲示板に書いたら釣り認定されるか炎上するかしそうだ。
というか、ミニバンに乗ってかっこよく見えないお父さんは、アウディとか乗っても駄目なんじゃないか?こうなってくるとこれは「お父さん」のデザインの問題じゃないか?とか、考え始めると、色々と頭の中でぐるぐるが止まらなくなった。
あまり長くなっても何なので、この話については、特化した記事をひとつ立てたいと思う。