工業デザイナーの山中俊治さんのブログをまとめた本『デザインの骨格』(2011年発行)を読んだので、その感想と、そこから広がった世界について。
もとがブログだからか、山中さんの人柄なのか、けっこう専門的なことも書かれているのだが、難解な印象はない。一流のデザイナーの頭の中はこうなっているのかーと、非常に興味深く読んだ。スケッチやプロダクトの写真にもうっとり。
で、巻末に漫画が収録されていて、なんで?と思ったらご自身の手による作品だった。若い頃、漫画家になるかエンジニアになるかで悩んだ末、工業デザイナーに落ち着いたという経歴の人らしい。
現在、義足やロボットを手掛けていることから、攻殻機動隊みたいなの描いてたの?と聞かれるらしいが、スポ根ものだったとか。
私は一時、「炎の転校生」や「コータローまかり通る!」のような、動きのある人物描写のマンガにはまって、そのような絵を描く練習をしていたので、勝手に親近感である。こちらは、真面目にやらなかったから全然上手くならなかったんだけど。
ところで、本書を読んでいる間に不思議なことがあった。
2月14日の朝、通勤電車の車内で、本書6章「人と出会う」にて紹介されているTeam Labの猪子寿之さんについての項目を読んで、面白そうだと思ったところ、同日付の日経ビジネスオンラインで、猪子氏のインタビューに遭遇。すごい偶然。
昨年、米シリコンバレーで開催した個展は、あまりの好評ぶりに、展示期間を当初よりも約半年延長した。 #日経ビジネス https://t.co/xHtSKzJCPY
— 日経ビジネスオンライン (@nikkeibusiness) 2017年2月13日
ロンドンでの展示「Transcending Boundaries」が話題らしい。蝶の羽ばたきや咲く花などを描写した、すべてデジタルの8つの作品が、境界なくゆるやかにつながり、また来場者の動きにも反応するという。
うーん未来だなあ。そしてこの展示を知るきっかけとなった、「デザインの骨格」には感謝したい。
というのは、日経ビジネスの件の記事タイトルは“海外で絶賛、「チームラボ」が世界でウケる理由 猪子寿之代表に聞く、デジタルアートのインパクト”。
へーへー日本は“海外で絶賛”好きですね、って感じで、山中氏によるこの猪子さんの描写を読んでいなければ、確実にスルーしていたと思う。ブログの該当箇所から引用。
Team Labの猪子寿之さんは、かなり奇人の部類に入るでしょう。ネット上でも、野性的とか天才とか、あるいはヘンタイとか、こわれてるとかいろいろな形容に事欠かない人です。今回のプロジェクトFのミーティングの中での彼の台詞を拾ってみます。私の記憶なので違っていたら猪子さん、すみません。
「おしゃれーなの作ろーかなとも思ったんですよ。でも、おれらが作ってるものって、しょーもないじゃないすか。しょーもないおしゃれな奴って最低っすよね。だから今回は地道にやります。」
8年前の話なので、最近はどうかなーと思ったのだが、2015年のYOUTUBE動画「【猪子寿之×堀江貴文】BARホリエモンチャンネル〜デジタルアート編vol.1~」を観たところ、やっぱりそんな感じのしゃべりだった。山中さんの描写力、半端ない。さすがマンガ描き。