今回のお題は「食品ロス」です。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が、7月3日から1か月の間に約13万食の弁当などの廃棄を認めたことを受けて。いやあ、びっくりですね。
東京オリンピックで大量の弁当などが食べられずに捨てられた問題について、大会組織委員会はオリンピック期間を含む1か月間で、およそ13万食が廃棄されたことを明らかにしました。
この組織委の発表を受けてTBSニュースは、同局の8月7日の「報道特集」が報じた「少なくとも13万食の廃棄」を「初めて認めた」と伝えています。
東京オリンピックの競技会場での食品ロスについて、組織委員会はTBSの「報道特集」が報じていた「少なくとも13万食の廃棄」を初めて認めました。
今月7日放送の「報道特集」は、東京オリンピックの競技会場42か所のうち20か所について、先月3日からの1か月間で大会スタッフらの弁当あわせて13万食が廃棄されていたと報じました。
「報道特集」から昨日の組織委発表まで20日。
私も勤め人ですので、「組織委内部でも調査してたんだけどお盆休みとかで遅くなったんだよね」などと理解を示したいのは山々です。しかし、これまでの五輪組織委のあれやこれやを考えると、擁護ははばかられるなあというのが素朴な市民感情ですかね。
いずれにせよ、競技会場は20か所だけではなく42か所ですので、今後「で?残りの22会場ではどれだけ廃棄出たって?」などと追及していく必要があるでしょう。
また、食品の廃棄問題は弁当だけではありません。
食品ロス問題ジャーナリストで栄養学博士の井出留美さんによると、「選手村のビュフェで発生した食品ロスが一切明らかにされていない」とのことで、農水省に問い合わせたところ、次のような回答があったとのこと。
オリンピック・パラリンピックの食品ロス削減の取組については、組織委員会において、持続可能性に配慮した運営計画(飲食提供対象者数等の考慮、ポーションコントロール、廃棄物の計量と見える化の実施状況等により評価することを計画)の結果をとりまとめた持続可能性大会後報告書を作成し、年度末に公表予定
出典:五輪食品ロス「13万食1億1600万円分」だけじゃない!他にもある理由とは?食品の一部は23区で販売(井出留美) – 個人 – Yahoo!ニュース
難しい文章ですね。要は2022年3月末に報告書を出しますよ、ということのようですので、Googleカレンダーにメモして、心静かにその日を待ちたいと思います。
さて、少し過去の話も蒸し返しておきましょう。1か月前の7月28日、同月23日のオリンピック開会式の際の弁当の廃棄が4000個だったことが報じられました。
この件について、組織委広報担当の高谷スポークスパーソンは、「多くの食品ロスが生じていたことについてはお詫び」しつつも、「余剰は廃棄ではなく、飼料化リサイクル・バイオガス化している」と説明しています。
「余剰により、多くの会場で食品ロスが生じていたことを組織委内でも確認した。特に開会式当日のオリスタ(オリンピックスタジアム=国立競技場)においては、スタッフ等が多かったために発注量が多く、伴って食品ロスも多かった。
また弁当の発注に対する当日のシフトによる実需との誤差が生じたことも、食品ロスが大きくなっていたことの一因と考える。
今週に入ってから、各会場において発注量の適正化措置が順次とられ始めている。多くの食品ロスが生じていたことについてはお詫び申し上げたい。なお、余剰は廃棄ではなく、飼料化リサイクル・バイオガス化している」
謝っているにもかかわらず、再資源化されることで「廃棄ではない」と独自に解釈し、ごみを「余剰」と表現した。
あれ、「食品ロス」と言っておきながら「廃棄ではない」とは面妖な。農水省のキャラクター「ろすのん」は、「食品ロス」を「本来食べられるのに捨てられてしまう食品をいう」と定義しているのですが、もしかして「廃棄」と「捨てる」は違うとか。
食品ロスに関して「ろすのん」が説明するのん!(中略)
「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品をいうのん。食べ物を捨てることはもったいないことで、環境にも悪い影響を与えてしまうのん。出典:食品ロスとは:農林水産省
組織委の人の発言では、何やら「食品ロス」という言葉が目くらましのように使われているような気がします。
ここはちゃんと彼らの「食品ロス」の定義を確認した方がよさそうですね。大会前には、運営計画を「食品ロス対策を進めるためのレガシー(遺産)とする」と言っていたそうなので、組織委にはその責任があると思います。
組織委は大会前、「持続可能性に配慮した運営計画」を策定し、「食品ロス対策を進めるためのレガシー(遺産)とする」とアピールしていたが、取り組みは形骸化した格好だ。
あと、定義はどうあれ、人が食べずに消費期限を迎えてしまった弁当や料理を「飼料化リサイクル・バイオガス化しているからオッケー」的な姿勢を看過してはならないでしょう。
というのは、弁当ができるまでには、作物や家畜を輸送して食品として加工し、また輸送して調理してパッケージに詰め、消費者のもとに輸送するという過程があり、また、それらの弁当が「食品ロス」となった際には、輸送して、パッケージと分離して、家畜の餌やバイオガス発電所で使える形にするという工程があります。
「持続可能性に配慮」というのであれば、これらのプロセスで消費されるエネルギー、排出される温室効果ガスもカウントされるべきですが、そこをごそっと無視してしまうとは、いかなる了見でしょうか。SDGsうんぬんを抜きにしても、エネルギーも食料も自給できない国のすることではないです。
「もったいない」って言葉、好きなんじゃなかったの日本人?