『白洲家の日々 娘婿が見た次郎と正子』(著・牧山圭男)と
『次郎と正子 娘が語る素顔の白洲家』(著・牧山桂子)を
続けて読みました。
この二冊はともに、戦前から戦後にかけて官僚や実業家として活躍し、吉田茂の片腕としてGHQと渡り合ったという白洲次郎と、その妻である文筆家の白洲正子を、家族の目で描いたものです。
娘さんの桂子さんが書いた『次郎と正子』が2007年出版、桂子さんのご主人で、次郎と正子からは娘婿にあたる牧山圭男さんの『白洲家の日々』が2012年出版。『次郎と正子』は、2009年のNHKの『スペシャルドラマ・白洲次郎』原案となったそうです。ちなみに次郎役は伊勢谷友介さんで、正子役は中谷美紀さん。
私がいつから白洲家に興味を持ったのか、また、次郎さんと正子さんのどちらに先に興味を持ったのか、全く記憶がないのですが、これまでに、お二人の著書や、伝記を何冊か読んできました。
その過程で出来上がっていたイメージは、英国仕込みのジェントルマンで「従順ならざる唯一の日本人」白洲次郎と、能をたしなみ骨董に造形が深い古典美のカリスマ・白洲正子というものです。
そのお子さんたちについては、桂子さんが料理が上手いという知識しかありませんでしたが、次郎さんも正子さんも、ベタベタせずそれでいて親としての役割はしっかり果たしてきた人たちなのだろうなあと思っていました。本書を読むまでは。
どうやら、彼らは生活をともにする子ども世代にとっては、普通以上に困った親であったようなのです。桂子さんの『次郎と正子』は、こんな一節から始まっています。
「何かが変だ」
それは、私が何歳の頃からか、自分を取り巻くまわりの世界を意識するようになった時に感じ始めたことです。
ネタバレになるので、詳しくは控えますが、自分の家庭がよそとは違うようだということで、かなり心を痛めた模様。特に、我が道を行く母・正子さんを受け入れるのは至難の業だったようで、悲しかったことから「デヤッ」と思ったことまで、さまざまな葛藤がつづられています。
ただ、一方で、父・次郎とともにイギリス貴族「ロビンおじ」の家に滞在したとか、祖母の通夜に向かうタクシーの中で吉田のおじちゃま(注:吉田茂)と賭けをした、というような、通常の子どもにはありえないシチュエーションも経験しているわけで。
そんな桂子さんが、一般のお嬢さんと同じであるわけはなく、彼女と結婚した牧山圭男さんは、次郎さんと正子さんに加え、桂子さんの分も含めてカルチャーショックを受けるわけです。その模様が綴られているのが『白洲家の日々 娘婿が見た次郎と正子』。
牧山さんご自身も、少年の頃から軽井沢ゴルフクラブに出入りしていたりとか、西武デパートでLoftの立ち上げに関わったりとか、私から見るとじゅうぶん雲の上の人なのですが、白洲家にかかっては単なる「婿」扱い。
もちろん、自虐的に描かれている側面はあると思いますが、なんというか、日本にも格差ってあるよね、というのが二冊を読み終えての感想です。