男性向けファッション指南本『最速でおしゃれに見せる方法』を読んだので、その感想。手に取ったきっかけは、著者のMB氏のブログ「Knower Mag 現役メンズファッションバイヤーが伝えるお洒落になる方法」の記事を読んで、あれ?ここお役立ちでは?と思ったからだ。
MBさんのブログはこちら。
Knower Mag
一般に、メンズのバイヤーさんや、スタイリストさんが語る「おしゃれ」は、ブランド至上主義だったり、「上質」「本物」にこだわっていたり、ビンテージがうんたらだったりで、ファッション初心者にはハードルが高い。
その点、MB氏のブログは、ユニクロのアイテムを使ったスタイリングを提案していたりして、現実的だと感じた。
しかし、書籍という形で、氏のノウハウをまとめて読んで感じたのは、初心者がこの本をおしゃれの教科書とするのは危険では?ということだった。
まず、黒のスキニーパンツが基本のボトムとされている点。このブログの「いつも同じ服」から始めるセルフブランディングにも書いたが、黒スキニ―は意外と主張が強く、着る人の体形や、着こなしのテクニックに左右されるアイテムだと、個人的には思う。
もちろん、トップスや靴は何を合わせるか、裾丈はどうするか等の、着こなしテクも教えてくれるのが本書だ。しかし、「最速で」を実現するなら、黒よりは暗いグレーの方が向いている気がする。白×黒の細かいチェック柄なんかでもいいな。とにかく黒は強すぎる。一歩間違うと、厨二っぽくなるし。
あと、ストール、ロングコート、ショートパンツなんかの難度の高いアイテムは、ファッションの指導が必要な人が無理して取り入れる必要ないと思うんだがな。女子受けも悪そうだし……って、ここまで書いてて気がついた。
MB氏は、「モテ」については言及していないのだ。本書で語られているのは、いかに「おしゃれに見せる」かということなのである。
そして、その「おしゃれ」は女性の方を向いていない。女子どうしの間では「かわいい」「おしゃれ」と好評だが、男性受けしないジャンルの服があるように、男性にのみ受けるメンズファッションというものがあるのかもしれない。
ということで、なぜ「おしゃれ」に見られたいのか?つまるところそれは「モテ」のためだ!という人は、本書のすべてを忠実に実践するのは避けた方がよさそうだ。
ただ、
- シルエットと「3首」に気を配る
- 色はモノトーン+1色に抑える
- ユニクロでもおしゃれに見せられる
等々のエッセンスはしっかり吸収するべきだと思うが。「3首」というのは、首、手首、足首を指しているが、ここを意識するかどうかで印象が全然違ってくるんだな、ということが本書を読めばよく分かる。
あと、228ページの[捨て方のコツ]はぜひチェックされたし。クローゼットに空きを作るための服を捨てる基準として、NGアイテムが挙げられているのだが、私はこの2つに激しく同意する。
②折り返すとチェック柄が出てくるパンツ。
どこのブランドがはじめたのかわかりませんが、疑いようのない「即捨てアイテム」です。
初心者は「折り返すとチェック柄が出てきて目立つし、ほかとは一味違う」と考えがちですが、安っぽいことこのうえありません。
⑥妙なデザインがついた白シャツ。
なぜかシャツのデザインで遊んだ商品は多く、とくに楽天系のショップで購入したものは注意が必要です。
襟の裏側に柄が入っていたり、襟が二重になっていたり、ボタン穴の色が別色になっていたり、前立て(ボタンが並んでいる前部分)がチェック柄になっていたり……
以前から、街で着用している人を見るたびに苛立つメンズファッションのアイテムだが、現役のバイヤーにして『最速でおしゃれに見せる方法』の著者のお墨付きを得た。今後も安心してイライラしようと思う。
しかし何だろうな、これらに対するイライラの原因は。逃げを残してる感じが気に障るのかもしれない。「気合いが入ってるように見えるのは嫌、でもファッションに無頓着なわけではないんですよ」みたいな。