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ファッションイラストレーター長沢節の屋根裏暮らしエピソードに学ぶ最小単位の住まいの美学

長沢節 伝説のファッションイラストレーター ファッション
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カラー、デザイン関連の本を図書館で物色していて、ふと目にとまった一冊、『長沢節 伝説のファッション・イラストレーター』。

日本のファッションイラストレーターの草分け、そして日本のファッション/アート界の有名人を多数輩出した「セツ・モードセミナー」の主催者の著書ということで、やや構えながら読み始めました。なんたってタイトルが「伝説の」ですし、収録されているファッションイラストからは、なんだか孤高な印象を受けましたし。

でも、長沢さんの生い立ちや、アーティストとして活動しはじめてからのエピソードの数々、それからご本人のエッセイを読み進むうちに、えらくチャーミングなお人だということが分かって一気に親近感を抱きました。

特に気に入ったのは、学校ビルの屋根裏に自宅を作り、「校長さん兼小使いさんとして」生活していたというエピソード。この自室というのが、なんとも格好いい。写真が公開されているのですが、アトリエ兼寝室兼キッチンの一間と、バスタブと便器のあるシンプルなバスルームがあるだけ。自宅は自分ひとりだけの空間とし、人との交流の場は他の場所に求めていたという話です。

やれ、お客さんが来たらどうしよう、なんて考えるから、裏の部分は隠さなきゃだの、あれが何人分いるから収納場所を確保しなきゃだの、ということで住まいがどんどん鈍くさくなっていくんですよね。住まいは最小単位でいい、という以前からの思いをあらためて強くした次第です。

話がそれました。長沢節さんが亡くなったのは、1999年。毎年恒例の学校のスケッチ旅行中に自転車で転倒して頭を打ち、その直後に帰らぬ人となったそうです。享年82歳。事故がなければ、もっと活躍されたでしょうに、いや、いまだに現役で活動されていてもおかしくない気がするだけに、残念です。

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