ここ最近、『芹沢銈介 文様図譜』 (コロナ・ブックス) を手元において、暇があったら眺めてました。型絵染の人間国宝・芹沢銈介(せりざわ けいすけ)の作品を、「文様」という点に着目して、鮮明なカラー写真で紹介してくれる本。2014年9月に発売されたばかりです。
芹沢銈介とは誰?という方のために。Wikipediaのまとめが分かりやすいです。
芹沢は確かなデッサン力と紅型(びんがた)、江戸小紋や伊勢和紙などの各地の伝統工芸の技法をもとに、模様、植物、動物、人物、風景をモチーフとした、オリジナリティあふれる、和風でシックな作品を次々と生み出していった。
「型絵染」は芹沢が創始した技法で、布の代わりに、紙を型紙で染めたもの。「型絵染(かたえぞめ)」という呼び名は、人間国宝に認定された折に案出された。
その仕事は、着物、帯、夜具、暖簾(のれん)、屏風(びょうぶ)、壁掛け、本の装丁、カレンダー、ガラス絵、書、建築内外の装飾設計(大原美術館工芸館)など、多岐にわたる。
(芹沢けい介―Wikipedia)
私が芹沢銈介という作家を初めて知ったのは、2012年の春、京都文化博物館の『宗廣コレクション 芹沢銈介展』のチラシでした。代表作「四季曼荼羅図二曲屏風」があしらわれたチラシだったのですが、その明快な構図と配色にいたく感動しまして。それ以来、注目するようになりました。
さて、今回手に取った『芹沢銈介 文様図譜』 は、『染色の挑戦~』よりコンパクトで、価格も1,728円とお手頃。100点の芹沢作品が「山の譜」「水の譜」「花・草木の譜」「人物の譜」「文字の譜」など13のカテゴリに分類されて紹介されており、その合間に、彼の原点であるスケッチや、もうひとつのライフワークであった工芸品の蒐集、また、柳宗悦らとの交流についてのコラムやエッセイが挟み込まれています。
新たな発見は、彼が驚くほど多作であったこと。あとがきによると、戦後、彫られた型紙は大小合わせて1万点に及ぶそうで、そして、その評価は
それほどの量の文様を作りながら、その中には汚いものや乱れたものがない。まさに一点のくもりのない青空のような境地が、膨大な仕事の隅々にまで貫かれている。高さが六メートルを超えるような特大の型染も、わずか五センチ角ほどのマッチのラベルも、同じように心を込めて取り組んだ。少しも手抜きをせず、倦むことなく一つひとつ文様を作り続け、莫大な量に至っている。恐るべき作家としかいいようがない。
というもの。幼いころからの膨大なスケッチで培われた観察眼とデッサンの力、34歳で染色の世界に入る前に経験したデザイナー職で鍛えられた構成力というストックがあったにしても、マッチ箱から6メートル超の大作まで、1万点もの作品を破綻なく創り上げるとは…これが本当の職人技かと、言葉を失った次第です。
色彩については、本書ではあまり触れられていませんが、カラー写真で見る芹沢作品の配色は、やはり魅力的です。
今回は、配色カードを使って、特に気に入った作品の色を拾ってみました。全体的に、dp(ディープ)やdkg(ダークグレイッシュ)トーンの色が多いのですが、明るいベージュや、鮮やかな朱色、ターコイズのような明るい青緑が入っているあたりが、軽快でポップともいえる作風の秘密のひとつかな?というのが、今のところの分析です。