先日衝動買いしたものの手つかずだった『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN の英語』を読み始めた。コミック『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の「一年戦争編」「シャア 過去編」から名場面をピックアップし、名言、名セリフを同書の欧米版の翻訳とともに掲載したもの。リクルート「受験サプリ」の人気講師・関正生氏による解説付きだ。
これがかなり本格的、というか難しくて泣けた。これが…ネイティブの英語…。いや、TOEICも終わったことだし、気分転換にと思ったのだが、そんな気楽なもんじゃない。解説を読んで理解するのがやっとというレベルの文が結構ある。
例えばこちら。誰のどの台詞かお分かりだろうか?
Having plotted a Zabi dictatorship—How dare he spout such drivel!?
“Zabi” しかわからん。正解はブライトさんのセリフ「ザビ家の独裁をもくろむ男がなにをいうのか!!」の英訳。”spout”は「まくしたてる」”drivel”は「たわごと」という意味なのだがこんな単語初めて見た。分詞構文使ってるあたりも、さすがエリートでいらっしゃるのね。
そして関先生が「異常に難しい」と評したのがこちら。
I nurse my share of grudges.
これは、シャアの「私にも意地というものがあるのでな」。
”nurse” は「乳母、看護師」が転じた語。(乳母・看護師が)育てる→(気持ちを)育てる→(ある感情を)抱くだそうで。
そして “my share of grudges” は、「恨みというもの(grudges)のうち、私の取り分(my share)」。通して直訳すると、「私は抱いている/恨みというもののうち私の取り分を」となるそうで、関先生いわく、
英語の超上級者にしかわからないこの表現が、またシャアらしさを醸し出しているように思えます。
とのこと。確かに、シャアの発言は、日本語でも理解しにくかったりする。どうやら、欧米版の英語は、ちゃんと原作のニュアンスを拾ったものであるらしい。例えば、マ・クベはこうなる。
A fine tone, is it not? Bei-Song I’d say.
(良い音色だろ? 北宋—だな)
付加疑問を “isn’t it?” としないことで、学者っぽい言い回しになるそうで。
一方、ミハルはこう。
An’ they made me think of Li’l ones back home.
(思い出しちゃったんだ チビ達のこと…)
“an'” は “and”、”li’l” は “little” の省略形。省略形を多用すると、庶民っぽさが際立つ英語になる模様。
そういえば、TOEICベースに勉強してると、高尚な英語にも俗っぽい英語にも触れる機会がないんだよなあ。本書を手にしたのをきっかけに、そろそろ幅を広げてみるとしよう。
その他、この『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN の英語』には、こんな名言の英訳が含まれている。
But the speed…One of them is really fast!
About three times the norm!!
If we never get hit, it’s no more than a pea shooter!
Damn! What sort of monster is this white thing!?
You call yourself a man!? You weakling!!
No one’s ever hit me! Not even my dad!
もちろん、これだけではなく、ガンダムの名言、名台詞と言われるものはほとんど網羅されている。比較的平易なこのへんの暗唱から始めて、ゆくゆくはギレンの演説までマスターしたいところだ。ちなみに「立て!国民よ」の全文の英訳が載っている。Sieg Zeon!