現役公務員の佐久間智之さんの本『パッと伝わる! 公務員のデザイン術』の感想。佐久間さんは、埼玉県三芳町の広報・プロモーションを手掛けている方です。
本書の内容は、ざっくり言うと、見やすく理解されやすいポスター、チラシ、通知文の作り方の解説。「公務員の」とありますが、民間の会社や私的なサークルなんかにも応用可能でしょう。
約120ページという薄さながら、レイアウト、色使い、フォントの基本が押さえられており、また、見出しや文を書くときの注意点も盛り込まれているので、非常にお得感があります。
第1章の「○×でわかる!住民に伝わるデザイン」は、ダメだけどありがちなデザイン例と、その改善案が紹介されています。
アドバイスうち、すぐにでも実践できそうなこととしては、
- 創英角ポップ体を使わない
- ワードアートの反射や立体を使わない
- 赤と緑、白と薄い色の組み合わせを使わない
などがあるでしょうか。ちょっと作ってみましたが、こういうのはダメってことです。
赤と緑、白と薄い色の組み合わせがNGなのは、そういった配色が、色覚が一般とは異なる方(いわゆる色弱の方など)や高齢者には見分けにくいから。詳しく知りたい方には、日本色彩研究所から出版されている「色彩検定UC級」の公式テキストがおすすめです。
さて、上のNG例には、他にもダメなところがあります。見出しのフォントの選び方や、文字の囲み方、各要素のメリハリなど。『パッと伝わる! 公務員のデザイン術』には、そういった点も、分かりやすく解説されています。チラシやパンフレットの作成を任された人は、ぜひご一読を。
一方、本書で引っかかった点としては、
・イラストより写真を使う
・写真は風景より人が写っているものを
・大きい1枚の写真で印象的に
が挙げられます。著者の佐久間さんは、自ら取材に行き、被写体の自然な表情を写真に収めるところまで追求していますが、これは誰にでもできることではないでしょう。
また、フリー素材の写真を利用する場合は、権利の確認やら処理が必要になります。
思うに、見出しや文章、全体のレイアウトが読み手に配慮したもので、伝えたい人に情報が伝わるのであれば、写真は必ずしも必要ではないのではないかと(本書のNG例に多用されている「いらすとや」さんのイラストだって、効果的な使い方はできると思う)。
写真にこだわるあまり、その他の部分がおろそかになってしまったり、トラブルを招いてしまったりしては本末転倒。本書を利用する場合、そこのところは念頭に置いておく必要がありそうです。