電力が取引される市場には色々ありますが、
メインと言っていいのは
日本卸電力取引所（JEPX）の「スポット市場」。
2021年1月に
「電力の需要がひっ迫して価格が高騰した！」
と多くの人が騒いでいたのは、
このスポット市場の価格のことです。
ただ、それまで電力業界に
特に注目していなかった皆さんにとって、
あのニュースは、
「え？スポット？というか電気って市場で売ってるんだ？」
というものだったのではないでしょうか。
そこで、このページでは
JEPXのスポット市場の仕組みや価格などを、
インフォグラフィックでわかりやすく
お届けしたいと思います。
ご覧いただければ、
次に電力の市場価格が高騰したときにも
すんなりとニュースに入っていけること請け合い。
まあ、またそんなことがあっては困るのですが、
知っておいて損はないと思いますので、
しばしお付き合いください。
日本卸電力取引所のスポット市場の仕組みとは
スポット市場は、日本卸電力取引所（略称：JEPX 読み方は「ジェーイーピーエックス」です）に開設されている市場の一つです。2005年に始まりました。
売り手は発電事業者で、買い手は小売電力事業者。一般の電力ユーザーは参加できません。
取引価格は、オンライン上で行われる入札で決まります。発電事業者さんと小売電力事業者さんが、それぞれどこで、どのぐらいの量の電力を、いくらで売りたい（買いたい）かを、JEPXの「取引システム」に入力します。
取引の単位は30分ごと。1日が0：00～0：30、0：30～1：00…のように30分刻みに48の枠に分割されており、それぞれの枠について希望の取引量、価格、エリアを入力できるようになっています。
最小の取引単位は50kWh、価格は1kWhあたり銭(0.01円)単位です。
入札期間は、電力の受け渡しが行われる日の10日前から前日の午前10時まで。
締め切ったあとは、取引システムがそれぞれの時間枠、エリアごとに、需要と供給が一致するところの価格を計算します。これを「約定価格（やくじょうかかく）」と言います。
約定価格の決定は入札を締め切ったその日のうち、すなわち受け渡し日の1日前に行われます。このため、スポット市場は「一日前市場」とも呼ばれます。
スポット市場の価格の動向は？
スポット市場が始まった2005年度からこれまでの約定価格は、JEPXのホームページで見ることができます。
ダウンロードしたデータの「システムプライス」の年度平均を計算してグラフにしてみました。
年度の平均価格が最も低かったのは、2009年の6.52円/kWh。最も高かったのは2013年の16.51円/kWhです。
2015年度以降は平均およそ8円～10円/kWhに落ち着いており、2019年度の平均価格は7.93円/kWhだったのですが、2020年度は11.21円/kWhに上がりました。
2020年度の平均価格の上昇には、主に2021年1月10日あたりから22日あたりまでの約定価格の高騰が影響しています。
この期間、150円/kWhを超えた時間帯が何度もあり、特に1月15日の16：30から17：00の枠は、スポット市場始まって以来の最高値251円/kWhを記録しました。
ちなみに、このときの市場価格の高騰の原因は、10年に一度と言われる大寒波の襲来、LNGの不足、あてにしていた火力発電所の故障、悪天候による太陽光発電の落ち込みなど、さまざまなトラブルが重なったことだと言われています。
どのぐらい量の電力がスポット市場で取引されているの？
一方で、スポット取引されている電力の量です。2020年度の約定量は、約3,128億kWhでした。2005年のスタート時と比較すると、約350倍の取引量。グラフを見ると、2016年度の電力小売の全面自由化以降、急激に取引量が増えていることが分かります。
3,128億kWhという量はどのぐらいかというと、売られている電力の約4割弱ぐらい。経済産業省が公開している電力調査統計の2020年度の結果概要によると、「電気事業者の販売電力量は8,215億kWh」とのことです。
電力調査統計 結果概要 【２０２０年度分】（PDF）｜経済産業省 資源エネルギー庁
というところで以上、このページではJPEXのスポット市場の仕組みと価格の動向についてお届けしました。何かと小難しい電力市場に関するニュースをチェックするときの手がかりになりましたら幸いです。
