昨日か一昨日でしたか、ツイッター(現エックス)で「弱者男性」がトレンド入りしていたので今日のお題とします。
少し前から、ツイッターやはてなブックマークあたりでよく見かけるようになった「弱者男性」という言葉。私は、ぼんやりと
「性別が男で国籍が日本で高齢者でもなく心身も健康なので、社会的に虐げられていても公的な保護の対象にならない人々」
という意味だと定義しています。
この場合の「虐げられる」とは、「キモい」「気持ち悪い」「クズ」などと罵倒される、恋愛対象とならないなど。一般的に語られる「弱者」より範囲が広いようですね。
私がネットの書き込み以外の一般メディアでこの言葉を初めて見たのは、2023年7月、一部週刊誌のWeb版の記事でした。
お天気番組の女性キャスターがプロテニス選手との交際を発表し、ファンが大いに悲しんだという話なのですが、この女性キャスターがいわゆる「オタク」受けする要素を持つ方。
そのことから一連の騒動は、「弱者男性の姫」が熱愛宣言!などと面白おかしく報じられてしまいました。
「弱者男性の姫」お天気キャスター・檜山沙耶、西岡良仁との熱愛宣言に飛ぶ誹謗中傷! オタクが怒る背景にあった“アイドル営業の側面”|週刊女性PRIME(2023/7/8)
檜山沙耶「弱者男性の姫」が完全キャラ転換…非モテ男を切り捨てて「粘着アンチ」大量発生| アサ芸プラス(2023/7/31)
これらの記事で「弱者男性」の意味は説明されていませんが、
「非モテ」
「オタク」
「女性経験の少ない男性」
同義であるようです。
さて、そんな「弱者男性」が8月に入ってまたトレンド入り。
どうやら8月10日に公開された映画版「クレヨンしんちゃん」の最新作の悪役の属性が、もろ弱者男性ではないかということで話題になっているようです。
黒い光を浴び、暗黒のエスパーとなった男の名は非理谷充(ひりやみつる)。バイトは上手くいかず、推しのアイドルは結婚、さらには暴行犯に間違われ警察に追われていた彼は、力を手に入れたことでこの世界への復讐を誓う。
『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』公式サイト
非理谷充は「バイトは上手くいかず、推しのアイドルは結婚、さらには暴行犯に間違われ警察に追われていた」男。名前は「非リア充」のもじりですね。年齢は30歳という設定らしいです。
ここで嫌でも比べてしまうのが、しんのすけのパパ・野原ひろし35歳。埼玉は春日部に一戸建てを構え、専業主婦の妻と子二人を養うサラリーマン。しがないサラリーマンという設定ですが、今の日本では上位何%に入るエリートじゃないかと、もうずいぶん前から言われているキャラクターです。
さて、この映画はどういうメッセージを発しているんでしょうか。
「不遇な君は努力が足りないだけ。心を入れ替えて頑張れば野原ひろしになれる」
なのか、それとも
「いろいろ巡り合わせが悪かっただけの人が排斥される世の中ってよくないよね」
なのか。
個人的には後者であってほしいです。
いや、時々思うんですが、たまたま男性に生まれたというだけで、どこかで正規雇用されるか起業するかして、結婚して所帯を持たないと後ろ指をさされる世の中というのは、なかなか厳しいものがあるなあと思うんですよね。
確かに、男性であることのメリットはあると思います。しかし、それを享受できるのは、一定程度以上の自己肯定感と上昇志向、あと体力がある場合ではないかと。
にもかかわらず、不幸にして気が付いたらどれも持ち合わせていなかったよ、という男性が「弱者男性」と憐れまれ、「努力が足りない」と非難され、子供たちが見る映画で悪役にまでされてしまうとしたら、あまりに救いがないと思う次第です。