海外向けの製品を作るときは、現地の気候とか、風習とか、人々の嗜好を考えましょう、という話が、カラーコーディネーター検定や色彩検定のテキストには書かれている。
具体例として挙げられていたのが、フレームに金の彫刻が施されている、中東向けの超大型液晶テレビ。センスの違いにぶったまげたが、そのとき思ったのは、「日本製品は高品質・高性能だから、デザイン次第でどこでも通用するのだろうな」ということだった。
しかし、『技術大国幻想の終わり』(著・畑村 洋太郎)を読んで、技術力だけでモノを売ることはできないのだと痛感。
いくら高スペックでも、それが現地で発揮できなかったり、現地の人に求められていなければ意味がないのだ。個人的に、衝撃を受けたエピソードを紹介してみる。
中国で自動車を売る(日産の例)
そして内陸部では、そも自動車がどんなものかを知らない人もいるので、まずクルマというものを知ってもらうキャンペーンが必要だったりするそうで。「世界中みんな日本製のクルマを欲している」と思ったら大間違いなのである。
ベトナムでオートバイを売る(ホンダの例)
1997年ベトナム進出、「買える人に売る」というスタンスで約13万円で販売
↓
安い中国のコピー品(5万円)に市場を席捲される
↓
中国製、粗悪品なのですぐ壊れる
↓
部品をホンダの純正品に取替えたいと消費者が望む(完全なコピー品なので互換性がある)
↓
ホンダが純正部品のバラ売りを始めたところ当たる
↓
機能や仕様をベトナムの市場要求に合わせた新製品「ウェーブα」(7万7千円)がヒット、現在はシェアの7割をホンダが占める
ちなみに、ウェーブαは、速度80キロしか出ないらしいが、日常利用では全く問題ないわけで。
インドで家電を売る
インドではカギのない冷蔵庫は売れない
→鍵がかかっていなければ、使用人が食糧持ち帰りOKだと判断するそう
全自動・乾燥機能付きの洗濯機は売れない
→電力不足、水質の問題から、仮に買ったとしても使えない。ちなみに、日本製で売れているのは、二槽式の1万円の洗濯機
なお、電力の供給が安定しない暑い国では、冷蔵庫には、停電になっても一定の時間冷蔵機能を維持することが求められるそうだ。サムソンなんかは、そういった現地のニーズを反映した製品を販売しているらしい。
その他のエピソード
その他のエピソードからは、より速く、より静かに、より多機能に、だけをモットーにしていると、掬い取れないニーズが世界にはあることがわかる。
・インドネシアでは、オートバイには4人ぐらい乗れると考えられているため、クルマは7人は乗れないとコスパが悪いとみなされる
・エアコンは、うるさい方が効いている実感があると好評の国がある等々。