米田優峻さんの「高校数学の基礎が150分でわかる本」の感想です。
私が本書を手に取った目的は、統計の勉強の下準備です。本格的に統計の勉強を始める前に、高校数学の微分・積分、確率統計の分野の学びなおしをしておきたいと思いました。
いや、高校数学の参考書はいくつか持っていたんですけどね。高校の数学が「1冊でしっかりわかる本」シリーズとか、入試問題精考とか、長岡先生の数学とか。
しかし、これらはボリュームが大きい。そして数式に拒否感がある人間にはやさしくないです。
比較的コンパクトで、説明がやさしい「1冊でしっかりわかる本」だけは、いちおう最後までたどり着きましたが、これだって一度で身につくものではありません。
何度か復習をする必要があるわけですが、「しっかり」もコンパクトであるとは言え、数学Ⅰ・Aと数学2・Bの二冊トータルで400ページぐらいあるんですよね。
また、数式は普通に使われていますので、復習にもどえらく時間がかかってしまい、いつまでたっても統計そのものの勉強にたどりつけません。
もっと簡単で、高校数学の基礎のところが身に付いた!という実感が得られる教材はないのか?
そう思っていた時に出会ったのが、本書「高校数学の基礎が150分でわかる本」です。
以下、この本を読んでみた感想です。この本を使って今度こそ数学の学びなおしができるのでは?と購入をご検討中の皆様のご参考になりましたら幸いです。
読んだ私はこんな人
その前に、本書を読んだ2023年8月時点の私の数学のレベルはこんな感じです。
- 微積がむずかしすぎて理系学部への進学は挫折、ほぼ四則演算しか使わない仕事につく
- 高校卒業30年後にSPIの問題集をやってみたところ、分数の計算もあやしくて衝撃を受けた
- マネジメント系とストラテジ系で点数を稼いで基本情報技術者試験に合格した(2019年秋期)
- 2021年に中学数学・高校数学の学びなおし開始。主な教材は、家庭教師のトライ運営の「Tryit」の動画講義と、「しっかりわかる本」シリーズの中学数学と高校1Aと数学2B
- 統計検定2級受験者の必須っぽい「統計Web」には、全くついて行けない
自分で振り返ってみてもよくわからない感じですが、ひとまず
この5年の間に高校数学の学びなおしをはかったものの、何も身に付いた気がしない状態で同じところをぐるぐる回っていた
という状態だとお考えください。
150分ではわからない
そんな私は、本書「高校数学の基礎が150分でわかる本」を「150分でわかる」ことはできませんでした。ただ読むだけでは理解できないところがあり、必要に応じて例題を解きながら読み進める必要があったからです。
著書の米田さんも、「150分」というのは読むだけの場合を想定しているようです。第1章「本書の特徴と構成」に、「演習問題をしっかり解いても、5~6時間で読み終わると思います」という注意書きがあります。
私の場合も、読み始めてから最後のページにたどり着くまでの所要時間はトータルで5時間ぐらいでした。300分ですね。
帯の「一度読んだら忘れない!」は、ちょっと言いすぎかなあと思います。
ただ、高校数学の全体をなぞってやったぜ!という達成感のようなものは得られました。「忘れない」ためには、何度か読み返す必要があると思いますが、200ページしかないと思うと気が軽いです。
数学の学びなおしに挫折する「4つの原因」を克服する手助けになるか?
著者の米田さんが、ダイヤモンドオンラインの特集記事で「大人が数学の学び直しでつまずいてしまう4つの理由」を挙げています。
「学ぶべき分量が多い」「内容が頭の中でイメージできない」「数学がどう役立つかわからない」「積み上げ式の科目である」の4つです。
そこで「【フルカラー図解】高校数学の基礎が150分でわかる本」がおすすめです。なぜなら、本書には以下の特徴があるため、前述の4つの原因で挫折する心配がないからです。
学ぶべき分量が多い…
→これだけは知ってほしい基礎に絞って200ページで解説!内容が頭の中でイメージできない…
→フルカラーの図解で超わかりやすく解説!数学がどう役立つかわからない…
→ほぼ全ての単元で「数学が役立つ実用例」を掲載!積み上げ式の科目である…
→中学数学の基礎から丁寧に解説!
→全ページの約20%が中学範囲大人が数学の学び直しでつまずいてしまう4つの理由 | 【フルカラー図解】高校数学の基礎が150分でわかる本 | ダイヤモンド・オンライン
大人が数学の学び直しでつまずいてしまう4つの理由【書籍オンライン編集部セレクション】子どもから大人まで数学を苦手とする人は非常に多いのではないでしょうか。ましてや高校数学ともなるとほとんどの人が挫折してしまった経験を持っているでしょう。しかし、高校数学の基礎は丁寧に学べば特別難しいものではなく、同時に得た知識は私たちの生活にも大きく役立ちます。そんな高校数学の超入門書として書かれたのが『【フルカラー図...
公式があった方がわかりやすいこともある?
「これだけは知ってほしい基礎に絞って200ページで解説」という点についての私の感想です。
本書では次の内容が学べます。
本書で学ぶ主な内容
一次関数/二次関数/指数関数/対数関数/場合の数/確率と期待値/統計/微分/積分/整数の性質/数列/三角関数
(Amazonの内容紹介より)
ただ、なにしろ全200ページとコンパクトな本なので、それぞれの項目の記述もコンパクトです。高校数学でつまずきがちなところが網羅されているわけではありません。
また、記号や公式を極力使わないというのが本書の売りではありますが、公式を使った方が楽だなあと思うことがありました。
例えば、順列・組み合わせのパターン数の計算は、一般的な数学のテキストで扱われる記号(CとかPとか)を使わないとかえってわかりにくい気がします。
根本のところを説明してくれているということはわかるのですが、通常の数学本への橋渡しを期待している人にとっては、情報が足りないかもしれません。
「フルカラーの図解で超わかりやすく解説!」という点
フルカラーの図解はかえって混乱する、読みにくいと感じることが多い私ですが、この本の図解は、本当に「超わかりやすい」です。
どの図解も過不足なく整理されており、「要は何」というところがよくわかります。周辺の空白も適切なためか、図解が本文を読むときの妨げになることもありません。
フォントがゴシック系である点、また色が彩度低めに統一されているところもよいです。
あとは、内容そのものからはそれてしまいますが、万年眼精疲労の私が評価したい点は紙質。
フルカラーの書籍の紙は多く光沢があり、50代の疲れ目にはまぶしすぎるのですが、この書籍は紙質がマットで反射が少ないのがいいですね。
こういった紙質の本は、光沢のある紙の本より軽いところもいいです。気軽に持ち歩けるというのは、学びなおしには大事なポイントだと思います。
ほぼ全ての単元で「数学が役立つ実用例」を掲載!について
この点も触れ込み通りだと思います。電気代や、投資の複利計算など実社会で使えそうな例が豊富です。
確率の「積の法則」の説明もわかりやすくて助かりました。宝くじで当たってスロットでも当たる確率、のように説明されています。
「積の法則」のポイントは、二つのイベントが互いに影響を及ぼさないことなのですが、よくある例は「サイコロを1回投げると2が出て、コインを一回トスして表が出る確率」だったりします。
問題を解き終わる頃には「はて、何の話だったか」となってしまうのが常でしたが、この説明ならすんなりわかります。
また、対数のグラフは、2022年度以降のコロナの感染者数を示すグラフを見て初めて価値が分かりました。こちらの記事で、一部が紹介されています。
大人の学びなおしだけでなく、「数学が社会で何の役に立つのか」という病気にかかったお子さんへの処方せんとしてもよさそうです。
読み終えての感想
本書で「高校数学の基礎が150分でわかる」かというと、疑問です。
特に三角関数や微分積分の分野。
うまく言えませんが、従来の数学の教材で苦戦した記憶が生々しい人が、「ああ、そういうことなのか。だったら初めからそう説明してよ」と腑におちる感じだというか。
うん十年のブランクを経て、頭が真っ白な状態から学びなおしをする人は、もしかして置いてけぼりになってしまうかもしれません。
とは言え、文系だけど情報系の資格を取りたい!統計の勉強をしたい!と言う人にはおすすめの一冊です。2進数の計算、標準偏差、相関係数などの説明は、かなり初心者にもわかりやすい形で書かれていると思います。
5年前、分数の計算もおぼつかないのに、基本情報技術者を受けることになった私のデスク上にそっと置いておきたいと思った本です。この本があればあんな苦労はしなくてすんだのになあ。