『僕たちはガンダムのジムである』(著・常見陽平)を読んだので、今日はその感想レビューを。2012年に出版された本ですが、著者の常見陽平さんのインタビューが「機動戦士ガンダム展」の図録に収録されており、興味を持ったので図書館で借りてみたのです。
まず、「ジム」とは何かという話ですが、これは『機動戦士ガンダム』に登場する量産型モビルスーツ(人が搭乗するロボットみたいなもの)の一種。
エースパイロットであるアムロが乗る「ガンダム」の機能をかなり制限した廉価版とでも言いましょうか。物語では、常に名もなき兵士扱いで、ジムの名場面と言えば、敵であるシャアが駆るモビルスーツに盛大に撃破される場面だったりします。
さて、本書は、一般の勤め人をそんなジムになぞらえ、一握りのエリートにはなれそうもない人間が、仕事や人生とどう向き合うべきかを説く本です。
僕たちはジムだ、自分を選ばれた人間だと勘違いするな、入りたくて入った会社じゃないかもしれないし、今やってる仕事はやりたいものではないかもしれないけど、安易に会社を辞めるんじゃない。
それではあまりに空しいというなら、自分のポジションを獲得しろ、仕事を適度に面白がれ、評判をアップしろ。そうすればそのうち上位機種であるカスタムジムにはなれるかもしれない、というようなことが本書には綴られています。
ただ思ったのですが、これって結局、「一流のコピー取りになれ」「今いるところで咲きなさい」という類の、さんざん聞いた感のあるキャリア論に、ガンダムの要素をトッピングしただけでは…。
アムロだって最初は素人で何もできなかったじゃないか、シャアだって左遷されたことあるじゃないか(共にエリート中のエリートになった)、という話が登場するあたりも、「僕たちはジムである」というコンセプトから外れて、無理矢理ガンダムネタを詰め込んだ感がありますし。
安易に会社を辞めるな、という主張には私も賛成ですが(会社でポジションを築けない人は、フリーランスになっても、起業しても、転職しても幸せにならない気がする)、「ガンダム絡めておけばOK」的な思惑が透けて見えるような気がして、ちょっとモヤモヤが残るところです。
そこへもってきて、ガンプラ世代の亭主が言いました。
「そもそもジムがエリートやし」
なんでもジムは、量産型とは言え、連邦軍がかなりの費用と手間を投じて開発したモビルスーツであるらしいのです。
つまり、人間で言えば、全国的に名の知れた大学に入り、有名企業に就職した人ぐらいのスペックはあるかと…そういえば、著者の常見さんは、一橋大卒、リクルート出身。なるほど、私があまり本書に共感できなかったのは、そのへんの事情もあるかもしれません。