『ハーバード流交渉術』 (フィッシャー&ユーリー) という本を読みました。今日はその感想文を少し書いてみたいと思います。
いやー勉強になりました。
「交渉」などというと堅苦しく非日常なイメージがありますが、日常的なこと、例えばカップルがどこで外食するのかを決めることだって立派な交渉なんですよね。
しかし、適切な手法を知らないばっかりに、残念なことになっている人は多そうですよね。ありがちな会話を創作してみました。
夫「結婚記念日だから外食にしよう。どこがいい?」
妻「いいね!(レストランのサイトを見せて)それなら私、〇〇がいい!」
夫「どれどれ? ああ、この前ミシュランの星が付いたっていうイタリアン。(値段を見て)高っ! それは無理。却下」
妻「(ムッ)えー? いつもはサイゼリアなんだから結婚記念日くらい贅沢しようよ。だいたい、金がないっていつもそればっかり」
夫「(ムッ)無いもんは無いんだから仕方ないだろ。だいたい何でイタリアンって勝手に決めるの? いつもそうだよな。ちょっと贅沢するなら俺はむしろ高級中華が食いたい」
妻「えー、嫌よ中華なんて」
夫「とにかく、君が行こうって言ってる〇〇は無理だから」
妻「やだ、絶対ここがいい」
夫「じゃ好きにしろ」
妻「あっ、そう。じゃもう予約しちゃうからね」
夫「俺は行かないけどな」
妻「何それ、もういいよ」
さて、二人そろってニコニコとおいしいご飯を食べるためには、どうすればよかったのでしょうか。「ハーバード型交渉術」が掲げる成功する交渉のための4つの原則を使って考えてみました。
1.人と問題を分離する
異なる主張を持つ相手を敵対者として捉えるのではなく、共に問題について考えるパートナーとしてとらえること。その点、この2人は主張が食い違った瞬間から相手を敵視し、普段からたまっていた不満を噴出させるというタブーを冒してしまっています。これでは冷静な話し合いなどできるはずがありません。
2.立場ではなく利害を考える
自分の立場を主張するあまり本来の目的を見失なわないこと。この2人も最初は「結婚記念日の夜に何か特別なことをして過ごす」という目的を持っていたはずなのに、完全に見失っていますね。
3.多くの可能性を考える
相手にとっても利益にもなるような調整案を考えること。このご主人の場合は、奥さんにそのレストランのどこが気に入ったのかを聞いてみればよかったですね。そうすれば、「そのうち星がつきそうな店があるんだけど」「チーズならここもおいしい」などという提案ができます。
4.客観的基準によって結論を出す
法律、市場価格といった客観的で公平な基準によって結論を出すこと。この場合は、結婚生活の長い同僚に聞いてみる、結婚記念日のディナーの相場がどのくらいなのかを質問サイトで聞いてみるなどの手法があったと思います。
いかがでしょうか?決裂を避けるためにできることが色々あったことがわかりますよね。これが「ハーバード流交渉術」の大きな柱ですが、この本にはその他にも交渉にまつわる重要なことが豊富な具体例とともに語られています。
自分の主張を通そうとして相手の気分を損ねてしまう人、逆に譲ってばかりでいつも損をしているという方はぜひ一度手に取ってみてください。
ちなみに、今日感想文を書いてみたこの『ハーバード流交渉術』は、発行されて20年以上にもなる本なんですが、全く古さを感じさせません。おすすめです。