「地層処分」とは、要は何でしょう?まずは3行でささっと説明します。
この場合の「核のゴミ」は使用済核燃料をリサイクルした残り。高レベル放射性廃棄物
日本では、まだ候補地の選定中。北海道の二つの自治体が名乗りをあげている
「地層処分」とは、高レベル放射性廃棄物を地下300メートルより深く、安定した地層に埋めることです。
この場合の「高レベル放射性廃棄物」とは、ニュースなんかでは「核のゴミ」なんて呼ばれているもの。使用済みの核燃料をリサイクルした後の残りを固めたものです。
もう少し詳しく言うと、溶かしたガラスといっしょに固めて「ガラス固化体」というものにして、何重にもバリアをほどこして埋めます。これが地層処分です。
いいえ。できたてのガラス固化体の表面の放射線量は毎時14,000シーベルト。
これは、レントゲンを1秒間に426回照射するのと同じレベルで、近づくと普通の人は2分で死にます(gacco講座「放射線安全社会入門~リスクの知見を暮らしに~」第5週7回の講義より)。
できたての状態で埋めるのではありません。表面温度が100℃ぐらいに下がるまで、30年から50年かけて冷却されてからです。
また、ガラス固化体をそのまま埋めるものでもありません。地層処分の際には、ガラス固化体は厚さ20センチの金属製の容器に入れられ、さらに厚さ70センチの緩衝材で保護されます。緩衝材は、「ベントナイト」という粘土です。
加えて、地層処分の場所は慎重に選ばれます。適した処分場の条件を挙げてみましょう。
- 地表から300メートルより深いところ
- 地下水の流れがゆるやか
- 酸素がほとんどない
- トンネルを掘れる強度がある
- 十分な広がりのある岩盤
- 近くに火山や活断層がない
- 近くに鉱物資源がない
- 海岸から近くて輸送に便利
これが、意外にもあるみたいですね。
国が公表している「科学的特性マップ」では、地層処分場の立地として好ましい場所がグリーンで塗られているのですが、西日本側も太平洋側も、沿岸の地域はわりとグリーンだったりします。
科学的「科学的特性マップ」のPDF|経済産業省資源エネルギー庁作成(2017年7月28日)
いえいえ、「科学的特性マップを見て、地層処分を受け入れてくれたらうれしいな」みたいな文書が、経済産業省から出ていますが、あくまでもお願いベースです。今のところ強制はありません。
交付金というメリットがありますからね。
北海道の泊原発近くの寿都町(すっつちょう)と神恵内村(かもえないむら)が候補地として「調査を受け入れます!」と名乗りを上げていて、2022年3月現在、「文献調査」の段階です。
文献調査とは、地質図や学術論文などをもとにした事前調査。
ここをクリアして、地元の理解が得られるまで、ボーリングなど実地の調査に進めません。
フィンランドでは、オルキルオト原発内の地層処分場「オンカロ」の建設が2016年から始まっていて、2020年には処分開始の予定という情報があります。
そしてフィンランドの次に、地層処分の実現性が高そうなのがスウェーデン。候補地は選定済で、安全審査中とのことです。北欧を含め、海外の地層処分の現状は、資源エネルギー庁のサイトで解説されています。
ただ、地層処分の実現には時間がかかるものです。フィンランドで地層処分場の候補地選びが始まったのは、1983年でした。建設開始は2016年。30年以上かかっているのです。
埋められる高レベル放射性廃棄物は、何重にものバリアがほどこされるとはいえ、無害になるまで何万年という危険物。候補地の選定には、そのことを踏まえた慎重さが要求されます。