カラーコーディネーター2級のテキスト(第二版 ※現在は改訂済)に、「民族と色彩」という項目があり、色々興味深いことが書いてあるが、最も印象的だったものの一つは、アラブ民族における緑の意味。
イスラム教の聖典コーランには、「楽園は深緑に包まれている。(中略)天幕のなかにはつぶらな瞳の美女が潜んでいる。彼らは緑の褥と美しい絨毯の上に身を寄せている」(出来事の章)とあり、楽園は緑の植物が茂っており、美女が緑の衣装を着て絨毯の上に待っているとの描写がある。以来、イスラム教では緑は天国を象徴する色となり、イスラム教を信奉する国家の国旗は、緑色に彩色されている。たとえば、リビアは緑一色の国旗で、サウジアラビアのものは緑地に白抜き文字で「アラーの神意外に神はない」と描かれている。
(カラーコーディネーション 第2版 カラーコーディネーター検定試験®2級公式テキスト P.50より)
これを読んで、リビアの国旗が緑一色とはなんとも潔く崇高な…と感心しつつ、検索して詳しく調べてみたところ、2011年にリビアの国旗は赤、黒、緑の三色旗に変わってた(テキストは2000年発行)。
2011年2月27日、リビアにおける内戦のさなか、反政府勢力によるリビア国民評議会がリビア唯一の代表政府であることを宣言し、ベンガジを中心とした暫定政権が発足。「リビア共和国」の国旗として、王政時代の国旗を復活させると発表した。
(リビアの国旗-Wikipedia より)
リビアの国旗が緑一色だったのは、1977年から2011年までのカダフィ政権時代。
そして緑一色の国旗制定の理由は、かなり拍子抜けするものだった。
かつてリビアはエジプトなどとアラブ共和国連邦を結成し、汎アラブ主義を唱えていた。そのため、同一の国家を強調する目的で、リビアはエジプトの国旗を共用していた。ところが、エジプトのサーダートは第四次中東戦争の後にアラブ諸国の敵イスラエルと単独で和解、友好条約を結んだ上にアメリカ寄りの外交を開始した。このことに怒ったカダフィは即日エジプトとの合邦・同盟を解消、側近たちに翌日までに新しい国旗を完成させろと命令した。しかもそれは深夜であった為に時間がほとんど無く、戸惑った側近達は苦肉の策でイスラームで最高の色である緑一色の国旗とした(しかしカダフィはそれを非常に気に入ったという)。
(リビアの国旗-Wikipedia より)
要はリビアの国旗が緑一色になったのは、単にデザインを考える時間がなかったからだと。そ、そうか…。
上記の経緯をざっくりまとめると、こうなる。
エジプトのサダト大統領が親米路線に転換
↓
カダフィ大佐激怒、エジプトとの同盟を破棄
↓
カダフィ大佐「新しい国旗を翌朝までに作れ」
↓
側近たち「翌朝とか、無地しか無理!」
↓
側近たち「そうだ!緑一色で行こう!」
↓
カダフィ大佐「これめっちゃええやん!」
どうやら、真理を追い求めたら緑一色になったという話ではない模様。なんだか拍子抜けした。
ちなみに、カダフィ政権崩壊後に復活した王政時代の三色旗の色には意味がある。赤は力、黒はイスラムの戦い、緑は緑地へのあこがれ。そして、中央に描かれた月と星の白は、国民の行為を表しているそう。