『七十歳死亡法案、可決』の感想。2012年の本なのだが、『もう親を捨てるしかない』で言及されていたので、手に取ってみた。
『七十歳死亡法案、可決』はこちら。どれだけ凄惨な結末が待ち構えているんだと胸躍らせながら読んでいたのだが、見事に肩透かしを食らったという印象。
あらすじはこちら。Amazonの内容紹介より。
2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法」を強行採決する。2年後に施行を控え、宝田東洋子(55)は「やっと自由になれる」と喜びを感じながらも、自らの人生の残り時間に焦燥感を隠せずにいた。我侭放題の義母(84)の介護に追われた15年間、懸命に家族に尽くしてきた。なのに妻任せの能天気な夫(58)、働かない引きこもりの息子(29)、実家に寄りつかない娘(30)とみな勝手ばかり。「家族なんてろくなもんじゃない」、東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。
これだけ読むと、めっちゃ面白そうでしょ。実際、前半はすごく面白かった。主な登場人物は、東洋子の立場から見ると
・以前はそれほど悪い人間ではなかったが、今や体の自由がきかず八つ当たり気味に嫁をこき使う姑
・マザコン風味は薄いものの、家事介護は女の仕事とナチュラルに思い込んでいる夫
・一流大学を出て一流企業に勤めていたが挫折し、就活中の名のもとに実家に寄生中の息子
・仕事を辞めて介護を手伝ってと頼んだら、家を出て行った長女
・自身の親の介護に関して口は出すが手も金も出さない小姑×2プラスその夫たち
という構成で、東洋子自身は、当初「奴隷嫁乙」の状態であったが、物語が進むにつれ、徐々に覚醒する様子を見せる。
さあ、いつ家を出るのか?出るとして、家中のものを裏返したり庭にミントの種を蒔いたりといった何らかの復讐はするのか?残された姑、小姑、夫、長男はどんな悲惨な末路をたどるのか?いや、その前に自暴自棄になった義母が、何らかの凶行に及ぶのか?もしかして『廃用身』みたいな展開?
などなど鼻息も荒く読んでいたのだが、後半の展開に唖然とした。最近、hagex氏のところと「鬼女速」その他のまとめブログを愛読している人間にとっては、物足りないにも程がある。実は全部、誰かの妄想だったというオチがあったらよかったのにな~というぐらい。
あるいは、「あとがき」として、長女のネットへの書き込みという設定の、以下のような文章が添えられていたら納得できたかもしれない。
いや、多分創作したの弟だと思うんだが弟よ。旧帝出のイケメンというのはあんたじゃなくて中学の頃あんたが色々とやらかしてCOされた沢田君だろう。しかも彼は卒業後に入社した大手企業でそのまま働いていて最近役職も付いたって沢田君のお母さんから聞いたぞ。
あんたはF欄すら中退したエリートヒキニートだろう。んでもって相変わらず改心するはずもないクソ親父とばあちゃんに泣かされながらも「でもあたしがいないとこの家は…」とかデモデモダッテしてるお母さんに部屋までご飯運んでもらってるんじゃないのか。一人鍋とか。
親のリフォーム会社を継いだ聡明で行動的な同級生というのは該当者いないし多分脳内彼女だと思うけどいろいろ設定雑すぎ。やりなおし。
あと、私は介護職ではないし実家からは逃亡済。職場にいい感じの殿方もいない。真実なのは私が地味顔で小太りってとこだけだ。そこはフェイク入れろよ。
いや、人ってそんな簡単に変われないと思うのよね、というのが本書の感想です。