『デザインの未来』(編集・構成:後藤 繁雄 企画・編集:日本グラフィックデザイナー協会)を読んだので、その感想を少々。
本書は、2007年に開催された展覧会『日本のグラフィックデザイン:ジャグダ1981-2006』にあわせて行われたリレートーク「デザインの未来」の内容が収録されています。
ちなみに、「ジャグダ」とは「JAGDA(Japan Graphic Designers Association = 日本グラフィックデザイナー協会)」のこと。1978年に、東京オリンピックポスターなど数々のグラフィックデザインの名作を残した亀倉雄策さんらを中心に設立された組織です。
リレートークは、四部に分かれて行われ、パネリストには、松永真さん、永井一正さん、原研哉さん、そして当時のJAGDA会長である廣村正彰さんら、そうそうたるメンバーが名を連ねています。各部のテーマと参加デザイナーの皆さんは以下の通り(敬称略)。
- 第一部 「広告とCIの未来」(浅葉克己×永井一史)
- 第二部 「ポスターとブック・エディトリアルの未来」(葛西薫×廣村正彰)
- 第三部 「パッケージとジェネラルグラフィックの未来」(松永真×佐藤卓×森本千絵)
- 第四部 「グラフィックデザインの未来」(永井一正×原研哉)
トークが開催されたのは2007年とちょっと前なのですが、語られているのはとても普遍的な内容なので、古いという印象はありません。哲学や科学の領域に及ぶような難解な話もありましたが、皆さんサービス精神たっぷりに、これまでのデザインの歩みと今後の展望を語ってくれていて、非常に面白く読むことができました。
トーク中に登場するデザイン用語や歴史的なイベント、作品、人名には、ページ下部を使って、逐一解説が加えられているあたりも親切です(目次がページ上部の綴じ代付近にあるのはものすごく不親切ですが)。
また、さまざまなデザインの領域が扱われているので、何となくデザイン方面に進んでみたいなーと思っている学生の皆さんにとって、進路を決めるよい指針となりそうです。
個人的に印象に残ったのは、第三部の松永真さんの「ストレスに対してどうデザインを投げかけていくか」という話でした。
私は、氏のデザインによるスコッティ(ティッシュペーパー)のパッケージデザインにいたく感激したのですが、あれはまさにデザインによってストレスが取り除かれた瞬間だったのかと。
80年代、ティッシュ箱はデコラティブな花柄が定番。それがださくて嫌だ、しかしティッシュケースカバーなんて貧乏くさいものは使いたくない、と思っていた高校生の私にとって、シンプルなデザインのスコッティは救世主に見えました。
当時、スコッティはあまり安売りがないとのことで、渋る母を説得して、買ってもらっていたのはいい思い出ですw
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デザインの未来