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託送料金にしれっと上乗せ!「廃炉負担金」と「原発賠償負担金」で電気代はいくら上がった?

託送料金に含まれる原発費用とは? ESG
この記事は約5分で読めます。

私たち電力の消費者が電力会社に支払う電気料金。この中には「託送料金相当額」というものが含まれています。

託送料金とは、ざっくり言うと送電線や変電所など電力ネットワークの使用料です。電力小売事業者さんが送配電事業者さんに支払うことになっており、それが私たちの電気料金にも反映されているのです。

このことはすでにご存じという方も多いでしょう。

しかし、その中に福島第一原発事故の賠償金や、廃炉のための費用が入っているのはご存じでしょうか?「賠償負担金」「廃炉円滑化負担金」といいます。2020年10月から追加されました。

廃炉負担金と原発賠償負担金

いかがでしょう。

えっ、何で送電線の使用料に原発関連の費用?そんなの了承した覚えないけど!

と思った方も少なからずいるのではないでしょうか。

それもそのはず、これらの費用が託送料金に含まれていることは、ひろく周知されているとは言えないからです。電気料金明細に必ず書かれているものではなく、導入時に大々的に報道があったわけでもありません。

そこでこのページでは、託送料金に含まれる廃炉負担金と原発賠償負担金の価格や、導入の背景をまとめてみました。

多分、読むとスッキリどころかさらにモヤモヤがつのること請け合いですが、今後の電気料金の値上がりにつながりうる話なので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います!

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託送料金相当額とは

電力を販売している小売電力事業者は、一般送配電業者に送電線や変電所など電力ネットワークの使用料を払うことになっています。これを託送料金といいます。

託送料金とは

そして小売事業者さんたちは、この託送料金を電気代に含めてお客に請求します。これが託送料金相当額です。

託送料金相当額は、電力を使用するエリアや電圧(低圧、高圧、特別高圧)によって異なりますが、例えば家庭で使われる低圧の従量電灯の場合だと、電力使用量1kWhあたり8~11円。

従量電灯の使用量料金単価がだいたい20~30円/kWhですので、その3分の1ぐらいが託送料金相当額ということになります。けっこう大きいですね。

では気になる内訳を見てみましょう。東京電力のホームページでは、託送料金相当額はこう説明されています。

託送料金相当額等について
電気料金には、当社が一般送配電事業者の送配電設備を利用する際に発生する接続送電サービス利用料(以下「託送料金相当額」といいます)を含んでおります。
託送料金相当額等について|東京電力

ここまではいいですね。問題は次です。

2020年10月、託送料金相当額に「賠償負担金」「廃炉円滑化負担金」が含まれるようになりました。

また、託送料金相当額には、法律で定められた賠償負担金相当額※1、廃炉円滑化負担金相当額※2、および電源開発促進税を含んでおります。
(中略)
※1 福島第一原子力発電所の事故以前から原子力損害の賠償のために備えておくべきであった不足分の資金
※2 原子力発電所の廃止を円滑に実施するために必要な資金
(引用は上に同じ、太字は管理人)

なんと、国も原発事業者も、万一の場合に備えてお金を積み立てておらず、自分たちだけでは福島第一原子力発電所事故の賠償金や廃炉費用を払えないので、国民みんなで負担してね、という話になったのです。

託送料金に原発費用が含まれるようになった背景

託送料金相当額にこれらの費用を上乗せするというこの政策については、

  • 本来は原発を持つ電力会社が払うべき費用ではないのか
  • 原発によらない電気を利用したいという消費者の選択の自由を奪うものではないか
  • 国会を経ずに省令だけで変えられる託送料金に入れてしまうことに問題はないのか

などなど、疑問や懸念の声があります。

一方の国は、この課金をどう正当化しているのでしょうか。賠償負担金を託送料金で回収する仕組みが決まったとされる2016年12月の閣議決定にはこうあります。

被災者・被災企業への賠償については、電力自由化が進展する環境下における受益者間の公平性や競争中立性の確保を図りつつ、国民全体で福島を支える観点から、福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行う。
原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について(平成28年12月20日 閣議決定)

さらにこれに続く部分をざっくり要約いたしますと、

「もちろん原発を持っている事業者にも負担してもらうんだけど、2.4兆円ぐらい足りないんですよ。今後40年ぐらいかけて、託送料金の一部という形で電気を使う国民みんなに負担してもらうことにしましょう。」

ということが書いてあります。

原発による電気の恩恵をみんなも受けていたわけだし、払ってくれるよね?ということのようです。

託送料金相当額に含まれる原発関連費用はいくら?

さて、ここで託送料金の内訳を見てみましょう。上で引用した東京電力のページにもとづき、現在の託送料金の内訳をグラフ化してみました(低圧料金、従量プランの場合。2022年2月現在)。

電力会社別託送料金の内訳

価格は電力会社によって異なりますが、「賠償負担金」は0.03~0.12円/kWh、「廃炉円滑化負担金」は、0円~0.23円/kWhです。

まあ今のところ微々たる金額と言えなくもなく、電気料金の額にはほぼ反映されていないようです。

しかし原子力発電に賛成していなかったのに、知らぬ間に後始末の費用を負担させられるということに納得できないという方も多いのではないでしょうか。

また、託送料金が国会を経ずに省令だけで変えられるというのも不気味な話です。

ある新聞は、託送料金を原発の「打ち出の小づち」と呼びました。

毎月の電気料金に、電気を送るためにかかる費用「託送料金」が含まれていることを知っている人は多いかもしれない。ただ、この中に東京電力福島第一原発事故の賠償費用と、各原発の廃炉費用が昨秋から上乗せされていることはどれほど認識されているだろうか。本来は原発を持つ電力会社が払うべき費用。消費者から広く、薄く、気付かれにくい形で回収できる託送料金が、何かとコストがかかる原発の「打ち出の小づち」になりつつある。
引用:知らぬ間に上がる電気代 原発の賠償・廃炉費、昨秋から上乗せ|中日新聞(2021年7月21日)

今後、託送料金にどんな費用が上乗せされるか分からないという危機感は持っておいた方がいいかもしれません。

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