私は中学高校と公立校に通ったのだが、当時の英語の授業を振り返ってみると、英語がしゃべれるという印象の英語教師は、非常にレアだった。おそらく、高校1年の担任でもあった人ぐらいじゃないだろうか。
でも、今はさすがに事情が違うよね?これだけ世間が英語だTOEICだって言ってるんだから。私みたいに中年になってから英語やりなおしをしなきゃいけないような不幸な人間は産出されてないよね?
と希望的観測を抱いてみたのだが、30年経っても、どうやらあまり事情は変わっていないらしい。Why can’t Japanese teachers of English … speak English?というJAPANTODAYの記事を読んだ感想。
この記事は、スコットランド生まれで、2006年からアジアに住んでいるLiam Carrigan氏によるもの。彼は、日本では6年以上暮らしており、大阪でライター、英語教師として活動しているという人物だ。記事によると、香港で英語を教えていたこともあるという。
彼は、日本語教師に当たりはずれってあるよね、とした上でこう述べる。
What I’ve learned over my years of teaching in Japan is that public school students here can also face a similar lottery when it comes to learning English.
(上記JAPANTODAYの記事より引用。以下同じ)
日本で英語を教えていて、日本の公立学校で英語を学ぶ生徒もまた、くじ引きという問題に直面していることが分かったという。
彼は、日本人英語教師たちの間の、英語能力のレベルの差に驚いたという。そして旧態依然たる教育手法にも。“Confucian”(儒教)なんて言葉も出てくる。
official guidelines on the teaching of English in Japanese public schools still lean towards a Confucian, teacher-centered approach, with an emphasis on rote memorization at the expense of communication practice.
“rote memorization”は「丸暗記」ぐらいの意味。昭和だなあ。
しかし、Carrigan氏は、日本人英語教師たちを、一概に時代遅れだと責めるのは酷であると言う。その理由として、氏が挙げていた内容を、一部引用しつつ紹介する。
英語の練習のための時間がない
On top of teaching 20-plus lessons a week, many teachers also have to contend with homeroom duties, organizing school clubs, departmental meetings, talking with parents and basically acting, to a certain extent, as surrogate parents to their students.
日本の先生は、週20コマ以上の授業に加え、学級運営、部活の顧問、会議、保護者との面談、さらにはある程度生徒の親がわり求められる。
語学は技術で“if you don’t use it, you lose it”(使わないとだめになる)というのに、これじゃいつ練習するの?という状況らしい。
年齢によるところが大きい
ここ、理由としてちょっと分かりにくかったのだが、著者の大阪勤務時代の話。30代40代の先生には、完全ではないがまずまずの英語が流暢な人もいたが、ある年配の女性教師は、こんなレベルだったという。
Then there was an older lady, approaching retirement and barely able to put two sentences together.
定年を待たずしてクビにしてほしいレベル。
継続的なトレーニングが(あるとしてだが)ほとんど得られない
香港の英語の先生は、毎週のようにセミナーを受けて、様々なトレーニングを受けられるようだ。
In Hong Kong, we had seminars almost every week, training me in elements such as IB certification, IELTS training, lesson planning, and many other areas.
その点、日本の先生は、一度資格をとってしまえば、トレーニングの機会はほとんどないという。
海外でのトレーニングが高価、そして休暇を取るのは難しい
Carrigan氏は、語学留学が必須だとは言っていない。無理なら、日本人英語教師のために語学研修会社などを導入するという手もあると考えているようだ。
ただ、日本の公的機関は、外部の人間を入れることを嫌うらしい。代わりにどうなるかというと、英語をしゃべれない上司から、どうやって英語の発音を教えるかをレクチャーされるというような、馬鹿馬鹿しい状況が起こる。
As a result, teachers are often taught by senior staff who lack the necessary skills. Again in my time working in Osaka City, we were faced with the ridiculous scenario of being taught how to teach English phonics, by a manager who could not speak English.
中学の時に、ベタベタな日本語発音で英語の発音を教える、通称「K婆」という教師がいたが、まだ絶滅してなかったんだな、ああいうの…私が経験したのは、かれこれ30年前の話なんだが。
さて、以上、Carrigan氏は、日本の公立学校の英語の先生が英語をしゃべれない理由を4つ挙げているが、突き詰めると、すべてはシステムと老害のせいなのねそうなのね、ってことになりそうだ。
TOEIC700レベルを要求されてぶーぶー言ってる無能な人材が捌けて、英語はトレーニングするのが当たり前、という英語教師が公立学校の英語教育の中心に据えられる日は来るのだろうか。
意欲にあふれた人々が、日々の雑務に負われているうち老害にジョブチェンジ、なんてことがないことを祈るばかりだ。