ウェブメディア「withnews」が手がける「SDGs前文超訳プロジェクト」が始まりました。著名人が意訳した「SDGs」の前文を音声コンテンツとして配信するという企画です。
第1弾は、アートユニットの「キュンチョメ(KYUN-CHOME) 」が超訳を担当。その訳文を読み上げるのは、女優・声優の高橋理恵子さん。私の大好きな「∀(ターンエー)ガンダム」でキエル・ハイムとディアナ・ソレルの二役を演じた方です。
キエル・ハイム役の高橋理恵子が読む「SDGs前文超訳プロジェクトVol.1」本日より配信開始! https://t.co/3fslAavoat
— ガンダムインフォ (@gundam_info) December 13, 2021
音源配信サービス「Spotify」限定ですが、Youtubeでは高橋さんの朗読シーンを観ることができます。
ディアナ様の声で聴くSDGs前文。背筋が伸びます。「∀ガンダム」の18話で、月の女王ディアナ(実はそっくりさんのキエル・ハイム)が、月と地球の和平をよびかける演説の場面があるのですが、それと同様「実現不可能なきれいごとかもしれないけど、それでも」と思わせる力があるというか。
BGMには、∀ガンダムの劇中の楽曲が使われていることもあり、説得力抜群であります。
前半は、サウンドトラックⅠより「The Third Advent~地にひそむもの」 。
後半は、TV版EDの「月の繭」です。
なお、「∀ガンダム」で高橋さんが演ずるキエルさんは、ガンダムチャンネルで公開中の第1話のサムネイルになっているこの人。主人公のロラン・セアックが仕えるハイム家お嬢さんです。
一方、超訳を担当したキュンチョメのお二人。SDGsの全文を読んだ際には「ガンダムに出てきそうな演説という感じ」と興奮したといいます。その思いが「超訳」にあらわれていると言えるでしょう。
ホンマ)
国連の全文ですね。読んだら全然印象が違うんですよ!すごいんです、めちゃくちゃ熱くて。もう、SFなんですよね。『人間、地球及び繁栄のための行動計画』という言葉から始まる40ページのSFなんです。興奮する!(笑)。全人類の誰一人を取りこぼさずに、私たちはこの目標を達成します、ということを、握りこぶしを天空に突き上げながら熱く語っているんです。我々人類はより上位の平和と繁栄を手にすることができるんだ!という熱い思いにあふれている。ナブチ)
ガンダムに出てきそうな演説という感じだよね。ホンマ)
そう、読んで真っ先に思い浮かべたのがガンダムだった。SDGsって、全方位に対して意識を向けていくという途方もない目標に思えますよね。全人類を取りこぼさず全ての目標を達成するって、もはや神話にすら聞こえる。でも、それを本気でやろうとしているスケール感と本気度にしびれました。出典:「ガンダムに出てきそうな演説」SDGs宣言、アーティストが読んでみた
「ガンダムに出てきそうな演説」SDGs宣言、アーティストが読んでみた「ガンダムに出てきそうな演説」。現代アーティスト「キュンチョメ」の2人は、国連総会で採択されたSDGsの宣言全文を読んだ感動を熱く語り出しました。その一方で、有名な17の目標については「標語化することによって失敗している」。自身の作品では…
SDGsは、国連の持続可能な開発目標(Sustanable Development Goals)です。2015年の国連サミットで採択されました。「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」など、2030年までに実現したい17の目標を掲げています。
17の目標を象徴するカラフルな輪っかのバッジやアイコンはここ2~3年の間に一気に広まりました。最近では企業を評価する指標にもなっています。
【SDGsへの評価が高い業界別ランキング2021発表!】
「情報・教育」の1位はソフトバンク、2位Apple、3位アマゾンジャパンという結果になりました。
→4位以下の順位はこちら https://t.co/sovcSxpgtl
— ダイヤモンド・オンライン (@dol_editors) December 8, 2021
ただ、広まると同時に「SDGsウォッシュ」なる言葉も聞かれるようになり、「誰も置き去りにしない」というSDGsの基本的な理念がそれこそ置き去りにされている感もありました。この「前文超訳プロジェクト」が、多くの人がSDGsをおさらいする、場合によっては一から学びなおすきっかけになるとよいなあと思う次第です。
ちなみに今回、この記事を書くにあたって外務省によるSDGsの仮訳も読んだのですが、かなり堅いです。ガンダムシリーズで言うと、シャア・アズナブルを演ずる池田秀一さんか、ギレン・ザビを演ずる銀河万丈さんの朗読がはまる文体。
前文
このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。これはまた、より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求ものでもある。我々は、極端な貧困を含む、あらゆる形態と側面の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課題であり、持続可能な開発のための不可欠な必要条件であると認識する。
すべての国及びすべてのステークホルダーは、協同的なパートナーシップの下、この計画を実行する。我々は、人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒やし安全にすることを決意している。我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している。我々はこの共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う。
今日我々が発表する 17の持続可能な開発のための目標(SDGs)と、169のターゲットは、この新しく普遍的なアジェンダの規模と野心を示している。これらの目標とターゲットは、ミレニアム開発目標(MDGs)を基にして、ミレニアム開発目標が達成できなかったものを全うすることを目指すものである。これらは、すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す。これらの目標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである。
これらの目標及びターゲットは、人類及び地球にとり極めて重要な分野で、向こう15年間にわたり、行動を促進するものになろう。
「SDGs前文超訳プロジェクト」の第2弾以降に池田さんと銀河さんが起用されると盛り上がるだろうなあと思いますが、シャアの言う「地球を癒し安全にする」は地球に隕石を落っことして人が住めないようにすることですし、ギレン様の言う「人間」「人類」は公国民限定なので期待はできませんかね。
ところで、第1弾で朗読を担当する高橋理恵子さん出演の「∀ガンダム」は、1999年の作品です。舞台は、アムロやシャアの活躍する「宇宙世紀」からはるか未来。モビルスーツ戦や艦隊戦の頃の技術は「黒歴史」として葬られ、地球の人々は産業革命以前のような牧歌的な世界を生きています。
しかし牧歌的な世界というのは、人種、民族、身分、ジェンダーによる差別や格差が当たり前だった世界でもあり。「∀ガンダム」の登場人物は固定的な役割に縛られている人、抜け出そうとしてもがいている人、気が付いたらいろんな垣根を超えちゃってた人などさまざまです。また、テクノロジーが人に幸せをもたらすのか?という問いも。SDGsの目標を具体的に考えてみたくなった人にはおすすめのガンダム作品です。