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映画「おいしいコーヒーの真実」のあらすじと感想レビュー

おいしいコーヒーの真実 ESG
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2006年公開のドキュメンタリー映画「おいしいコーヒーの真実」(英題:Black Gold)を観たのでその感想です。

この映画は、2005年にイギリスのテレビドキュメンタリー「Black Gold」を、アメリカ合衆国と共同でリメイクしたもの。世界貿易の不公正な実態を、エチオピアのコーヒー生産農家の窮状に焦点を当てて描いています。

本作の中心となる登場人物はタデッセ・メスケラ氏です。オロミア州コーヒー農協連合会の代表で、エチオピアの7万4000人以上のコーヒー農家を束ねています。このドキュメンタリーでは、タデッセさんがコーヒー豆の品質を厳しくチェックする様子、コーヒーを適正な価格で買ってくれるバイヤーを探して海外を奔走する様子が描かれています。

コーヒーは世界で最も日常的な飲物。全世界での1日あたりの消費量は約20億杯にもなる。大手企業がコーヒー市場を支配し、石油に次ぐ取引規模を誇る国際商品にしている。私たちは「おいしいコーヒー」にお金を払い続けている。しかし、コーヒー農家に支払われる代価は低く、多くの農家が困窮し、農園を手放さなくてはならないという現実。一体なぜ?
(出典:映画『おいしいコーヒーの真実』公式サイト

タデッセさん以外の登場人物は、主に貧しいエチオピアのコーヒー農家の人々と、欧米のコーヒー愛好家やバイヤーたちです。

コーヒーの買い付け価格が下がって家族を満足に養うことができないと嘆くコーヒー栽培農家と、「父には悪いがああはなりたくない。コーヒー農家以外だったらなんでもいい」とインタビューで希望の職業を語るその息子。その地域の学校には、満足な黒板もありません。裸足で登校する子供たち。学校長は、このままだと教師の給料も払えなくなると訴えます。

一方で、先進国の代表として描かれるのは、コーヒーを貴重品として吟味するバイヤーたちや、バリスタ競技会の青年、シアトルのスターバックス一号店で同社の素晴らしさを称える女性店長、イタリアのカフェでコーヒーを楽しむ老夫婦などです。

カフェの従業員や顧客にとってもコーヒーは生活の糧、必需品ではあると思います。そして彼らにコーヒー産地の人を虐げるつもりなどはないでしょう。ただ、食うや食わずやのエチオピアの農村の人たちとの対比で、何と言うかよくて能天気、悪く言えば醜悪に見えます。

さて、映画が公開された2006年から15年がたった2021年。その後のタデッセさんや農家の人々はどうなっているのでしょうか。「フェアトレード」という言葉も耳になじみ、SDGsだ、ESG投資という言葉を聞かない日がない現在、名の知れた大企業が零細農家を買い叩いているなんてことはなくなっているはずなのですが。

「おいしいコーヒーの真実」のその後のタデッセさんの情報を探してみたところ、「tharawat magazine」というWeb媒体に、2020年6月付でインタビューが投稿されているのを見つけました。

その中でタデッセさんは、こう語っています。下記引用の和訳です。

「私たちの組合は結集し、かねて輸出業者への輸送で利益を得ていた村の仲買人や地区の供給業者をカットして、市場にコーヒーを直接持ち込み始めました。ひとたび私たちの農家が彼らの作物の売り手として確立すると、彼らは輸出業者とコーヒーの価格を直接交渉することによって利益を取り戻し始めました。そうすることで農家の利益は250%増加しました」

Our unions began to assemble and bring their coffee directly to the market, cutting out the village middlemen and district suppliers that had previously profited from transferring crops to exporters. Once we established our farmers as the sellers of their own product, they started to regain their profit by negotiating the price of the coffee with the importers directly. This increased the farmers’ profit by 250 per cent.
Collaborating to Create Prosperity| tharawat magazine

このインタビューによると、少なくともオロミア地区の農民は立ち上がり、収益がアップしたようです。記事の最後には、真新しい学校のような建物の写真も掲載されています。

上記のインタビューとは別に、タデッセさんが農村に水をひいている動画も見つけました。これも2020年付。今後、この動画がエンドロールで流れるような、希望の見える結末の映画がリメイクされるような状況であることを願います。

ということで、このページでは、映画「おいしいコーヒーの真実」を紹介しました。環境テーマとしては、フェアトレード、エシカル消費など。SDGsでいうと、1から12までのほとんどに問題があるような地域の人々の物語です。

目標1(貧困) あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
目標2(飢餓) 飢餓を終わらせ,食料安全保障及び栄養改善を実現し,持続可能な農業を促進する。
目標3(保健) あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し,福祉を促進する。
目標4(教育) すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し,生涯学習の機会を促進する。
目標6(水・衛生) すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。
目標8(経済成長と雇用) 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。
目標10(不平等) 各国内及び各国間の不平等を是正する。
目標12(持続可能な生産と消費) 持続可能な生産消費形態を確保する。

(出典:持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の17のゴールより)

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