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映画「たちあがる女」のあらすじと感想レビュー

たちあがる女 ESG
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映画「たちあがる女」の感想です。アイスランドを舞台にした2018年の映画。むりやりカテゴライズするならば、「地球環境問題をテーマとするヒューマンドラマ」ということになるのでしょう。

しかし、「たちあがる女」の魅力はそれだけでは語りつくせません。

  • 舞台はまるで別の惑星のようなアイスランドの自然。
  • コーラス講師と環境活動家の二つの顔を持つ主人公の特異なキャラクター。
  • そして、劇中の音楽を奏でるバンドや合唱隊を画面に登場させる演出。

これらの要素によって、何ともいえないファンタジー色とおかしみがかもしだされ、この映画を唯一無二のものにしています。

監督は、北欧の新しい才能として注目のベネディクト・エルリングソン。主演女優のハルドラ・ゲイルハルズドッティルは、二つの映画祭で最優秀女優賞を受賞し、作品自体、2019年アカデミー賞のアイスランド代表作品に選ばれました。

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「たちあがる女」のあらすじ

さて、この映画の邦題は「たちあがる女」ですが、英語のタイトルは「Woman at war」。「たたかう女」なのです。

主人公のハットラはコーラス講師で、養子を迎えることを切望している中年女性。朗らかで魅力的な人物です。しかし、彼女には裏の顔がありました。ハットラは地元のアルミニウム工場と戦う環境活動家でもあったのです。

ここで彼女の戦いっぷりをくわしく語ることはしませんが、まあ、「コーラス講師」「中年女性」という属性から、多くの人が想像する域を超えているということだけは。

そんなハットラに、ウクライナから4歳の女の子を引き取らないかという話が舞い込んできます。母になるという夢と、戦いは両立しません。ハットラは葛藤しますが、決断を下します。

アイスランドの電力事情と産業

舞台であるアイスランドについては、予備知識なしでも楽しめる映画ですが、電力事情や産業を知ってからの方が、より深く味わえるかもしれません。そこで、ここからはアイスランドの各種データをご紹介します。

アイスランドは、スカンジナビア半島とグリーンランドの中間あたりに位置する島国です。人口は約36万人、国土面積は10.3万平方キロメートル。日本の1/4ぐらいの国土に、鳥取県の人口より少ない人が住んでいるということになります。劇中で、ハットラがコケ類以外生き物の姿が見えない荒野を駆け巡るシーンがありますが、それも納得、という感じです。

主な産業は、観光とアルミニウム工業です。観光については、ご存じの方も多いのではないでしょうか。アイスランドは火山と氷河の国で、美しくも奇妙な地形と自然現象が見られるため、世界中から年間200万人以上の観光客が訪れます。高緯度のためオーロラも見られます。

一方、アイスランドでアルミニウム工業がさかんだというのはなぜでしょう?原料であるボーキサイトの産地だからではありません。

答えは、電気料金が安いから。

火山国であるアイスランドの電力は、地熱が20%。他は水力で、ほぼ100%が自然エネルギー由来です。これらの電力は、火力発電や原子力発電よりも安価。アルミニウムの精錬には、電気をたくさん必要とするため、アルミニウムを安く作りたい企業を世界中から誘致することができたのです。

劇中で、ハットラが標的としているのは、そういったアルミニウムの工場です。

感想まとめと日本の地熱発電について思うこと

アルミニウム工場の何が問題か、ハットラが具体的に指摘する場面はありません。ただ、公式サイトによると、エルリングソン監督は「主人公は、手つかずの野性を守る保護者で、アルテミスのような存在です」と語っています。

この映画は、我々の世界に差し迫っている脅威をテーマにした英雄物語です。
ヒーローを描いた冒険物語であり、シリアスな内容を笑顔で語るおとぎ話なのです。
主人公は、手つかずの野性を守る保護者で、アルテミスのような存在です。
彼女は一人でこの惑星の急速な変化に直面し、母なる地球と未来の世代を救う役割を担っています。

出典:「たちあがる女」公式サイト

アルテミスは、ギリシア神話の月と狩りの女神で、弓を使います。ハットラもまた弓の名手であるという設定は、おそらくアルテミスを意識したものでしょう。

そうそう、この映画の見どころには、ハットラが破壊工作、逃亡の際に見せる異様な身体能力の高さもあります。リアリティを追求するなら、かつては特殊工作員だったとかいう設定が必要かもしれません。ジョディ・フォスター主演でハリウッドリメイクの話が進んでいるようですが、オリジナルのどこかとぼけた味わいが失われて、環境アクション巨編になってしまった、なんてことがなければいいなあと思う次第です。

あと、映画からは離れますが、同じく火山国である日本で、なぜもっと地熱発電が行われないのかという疑問を強く抱きました。2019年度の日本の電源構成における地熱発電の割合は、わずか約0.3%。太陽光の6.7%、風力0.7%、バイオマスの2.6%よりも低いのです。

日本には世界第3位の地熱資源のポテンシャルがあり、タービンや発電機については、アイスランドを含む他国に輸出するほどの技術を持っているにもかかわらずです。

参考:【インタビュー】「世界第3位のポテンシャルを持ち、高い技術を有する日本の地熱開発」—小椋 伸幸氏(前編)|資源エネルギー庁

普及が進まない原因としては、開発コストが高かったり、適した土地が温泉観光地であったり国立公園・国定公園だったりと、いろいろクリアするべき課題があるようですが、資源小国なんだし、2050年にカーボンニュートラルって言っちゃったんだし、真面目に考えるべきでしょう。

ちなみに、2021年10月に公表された「第6次エネルギー基本計画」によると、2030年のエネルギーミックス目標における地熱の割合は1%だそうです。

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