宝塚ホテルで開催された「宝塚市立手塚治虫記念館トークショー 富野由悠季×高橋良輔 虫プロの遺伝子~ロボットを創った男達」に行ってきた。いや、濃い2時間だった。
ものすごくざっくり言うと、このトークショーは、手塚治虫氏が設立したプロダクション出身で、その後ガンダムを作った富野監督と「装甲騎兵ボトムズ」を代表作とする高橋監督の話を、手塚氏の故郷である宝塚で聞いてみようという企画。
1月に抽選で募集が始まり、申し込みは1人1回可。1応募につき2人まで参加申請できるので、当初は私だけ応募しようかと思った。が、宝塚在住のガンダム好きとして、生富野氏を見過ごすわけにはいかない。ということで、念のために亭主も追加で応募。結果、亭主だけが当選した。倍率は2倍だったらしい。危なかった。
参加者層は、どこかにミリタリーテイストの入った30~40代の男性がメインだったと思う。
それにしても、当日朝9時10分に一度会場に行き、参加費(1人700円)を払って先着順に当選ハガキを指定席チケットに引き換えるというシステムは、非常に面倒くさかったな。トークショーは13時からなのに。他所から来た熱心なファンは、どうやって時間をつぶしていたのだろう。
トークショーの当選者は、手塚治虫記念館に無料で入場できる権利が得られたのだが、過去の経験からすると、常設部分もひっくるめて同館で1時間以上つぶせる人は、それほど多くないんじゃないかと思う。
前日に訪れたという両監督も、トークショーで記念館の感想を訊かれて(敬称略)、
高橋「ずいぶんコンパクト」
富野「(昨今のアニメーションの展示技術の)取り入れがちょっと鈍い」
富野「裏切られてます」
富野「怒り狂ってました」
と切り捨てていたしな。昨年、同館のウルトラマン展に行ってがっかりした人間としては、胸が空く思いだったが、招聘側のなかには青くなったり赤くなったりした人がいたかもしらん。
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ちなみにだが、手塚治虫記念館に隣接していた宝塚ガーデンフィールズ(宝塚ファミリーランドの跡地の一部)は、現在は道路とニトリになっている。ほんと、時間つぶすとこないのよ。
さて、トークショーで特に印象深かったのは、事前にネットで募集した質問のうち「手塚先生に贈る言葉は?」という趣旨の問いに対する回答。
富野監督は、当初「ありません」と即答した上で、「いかにも今のメディア的発想の質問」とバッサリ。
しかし、その後「私はやっぱり手塚の弟子」という高橋監督が師への感謝の言葉を述べると、「そういう趣旨ならば」と前置きした上で、富野監督は
「手塚先生は、いち漫画家じゃねんだよ、お前らそれ分かれ」
と聴衆に向かって言い放った。一方、ルーチンワークを嫌っていたという手塚氏に贈る言葉としては、
「巨大ロボットものから脱出できませんでした、ごめんなさい」
と。本気でそう思っているのか、自虐風味のリップサービスなのかは不明だが、衝撃の一コマであった。
あと手塚作品のエッセンスを語る際に「宝塚のネーチャンの色気」に繰り返し言及していたのが印象的だった。今回の来訪ですれ違ったことがあったらしく「(足が長いので)ケツがこんな高さに!」とかも言ってたな。
宝塚市がらみのイベントで、タカラジェンヌを「ネーチャン」呼ばわりし、「ケツ」発言をした人は、富野氏以外にそうそういないんじゃないだろうか。面白い。「(手塚治作品でもなんでも)“ファン”になるのはよくない」との発言もあったが、ファンになりそうだ。