田中一光ポスター展を見てきたのでその感想。大阪市の国立国際美術館で4月5日から開催されている「グラフィックデザインの華—田中一光ポスター展」だが、私がその展示があることを知ったのが6月8日。
たまたま会場付近を通ることがあって、田中一光氏の代表作である「Nihon Buyo」が使われた告知のチラシが貼られているのを見たのだが、2か月以上も知らなかったとは…開催期間を確認すると、6月19日(日)までとある。もうすぐ終了。危なかった!
こちらが「Nihin Buyo」。1981年の作品。カリフォルニア大学(UCLA)で開催された日本舞踊公演のポスターだ。
さて、やってきました大阪は中之島の国立国際美術館。
田中一光ポスター展の開催を伝える屋外広告。隣は、B3Fのメインの展示室で同時開催中の森村泰昌展のパネル。
ここでも「Nihon Buyo」のがお出迎え。いよいよ会場入りだ。
さて、今回の大阪における田中一光ポスター展の概要と、田中一光氏の経歴、受賞歴などはこちら。国立国際美術館のサイトより引用。
グラフィックデザイナーとして、戦後日本の視覚文化の形成に大きな足跡を残した田中一光(1930~2002年 奈良市生まれ)。そのポスターの仕事の中から、選りすぐりの作品を紹介します。田中一光は、京都市立美術専門学校卒業後、鐘淵紡績、産経新聞社でデザイナーとして活動を開始しました。23歳で日本宣伝美術会(日宣美)会員になると、57年、拠点を東京に移し、63年に独立して「田中一光デザイン室」を主宰します。以後、東京オリンピックを始めとする数々の国家的行事や、セゾングループ、無印良品などのデザイン事業に関わり、海外でも多くの個展を開催するなど、国際的にも高い評価を得ました。
代表作には、1972年に札幌で開催された冬季オリンピックのエンブレムや、産経観世能、イッセイミヤケのポスターなどがある。それぞれ順に、Pinterestから拾ってきた画像を貼っておく。これらは、今回のポスター展でも見ることができた作品だ。
冬季オリンピック札幌大会 ’72(1968年)
第5回産経観世能(1958年)
ISSEY MIYAKE 1996(1996年)
今回の「グラフィックデザインの華—田中一光ポスター展」は、ポスター50点のみの展示なので、具体的に示されることはなかったが、LOFTのロゴや、EXPO’85(1985年のつくば科学万博)のエンブレムをデザインした人でもある。
私が田中一光氏の名を初めて知ったのは、カラーコーディネーター2級の教科書だった。ストライプの外壁と横長の建物形状から「軍艦パジャマ」の名で親しまれてきた赤坂東急ホテルの色彩計画を担当した人ということで(何で読んだかは忘れたが、一光氏はその別名を好ましく思っていなかったようだ)。
その次に、氏の名前が意識にのぼったのは、グラフィックデザイナーの原研哉氏の本を通じてだった。原氏の前に無印良品のアートディレクターを担当していたのが、田中一光氏と知って、興味を持ったのだ。この頃に『デザインの前後左右』などの著作を読んだ。
そして、最近「田中一光」の名前を耳にしたのは、昨年2015年の佐野研二郎氏デザインの2020五輪エンブレム騒動のさなかだった。このブログの読者の方が、「Nihon Buyo」と件のロゴの類似性を指摘するコメントを寄せてくれたのだ。言われてみれば確かにな。
ということで、私の田中一光というグラフィックデザイナーへの関心は、このような段階を経て深まってきた。ただ、以前から氏の一部の作品は、あまり好みではないのかもしれないと思っており、今回のポスター展では、それを確認することになってしまったという感がある。
いや、田中一光氏の作風というより、80~90年代に先鋭的とされていたデザインが好きじゃないのかもしれないな。ビビッドな色の多色使いとか、直線的な構成とか。どうも「昔のグラフィックデザイン」という気がしてしまうのだ。
MUSIC TODAY ’85(1985年)
その点、時代を感じないのは「JAPAN」や「ヒロシマ・アピールズ」、海遊館のポスターや、書やタイポグラフィを用いたモリサワの一連の広告など。
JAPAN(1986年)
ヒロシマ・アピールズ(1988年)
海遊館(1990年)
リュウミン 新古典主義(1986年)
あと、今回のポスター展にはなかった作品だが、この記事を書くにあたって調べ物をしているときに見つけた「Concert / Projection de Films – Toru Takemitsu」(1997年)のポスターも好き。この作品と、「JAPAN」は、俵屋宗達の影響を受けたと考えられているようだ。
参考記事:
「20世紀琳派 田中一光」展講演リポート|美術館・アート情報 artscape
「20世紀琳派 田中一光」展とは、琳派400年にあたる昨年2015年に開催された、田中一光と琳派の関係をテーマにした京都dddギャラリーの展示。これ知らなかった。見たかったなあ。今後、同様の企画展がまた開催されることを期待したい。今回のは単に50枚のポスターを並べただけだったしなあ、というのが率直な感想。
あと、作品が収められたガラスケースが反射するのは、なんとかしてほしかった。特に黒が大面積を占めるデザインだと、自分の顔が写り込んでしまい、いろいろ台無しだってば。